★国家情報局設置法が成立したが、その目的のひとつに、「外国勢力のものと疑われるアカウントからSNSの不審な投稿」といういずれも実体のない不安をあおる説明がある。「疑われる」「不審な」は法律要件としてはあいまい過ぎるが、国民のイメージを膨らませるには十分だろう。しかし現実はあいまいどころか、現職の首相の事務所が昨年の自民党総裁選や2月の衆院選で他候補を中傷する動画をSNSに投稿したとする週刊文春の1カ月以上にわたる証拠満載の記事に、抜き返す気力もない新聞の現場はだんまりを決め込み、論説など幹部だけが紙面のコラムや社説で問題提起するなどいびつな報道が続いている。また地方紙のほうが疑惑解明に積極的な印象で、政治部や社会部の記者をそろえる大手メディアの消極性が際立った。当然、それは大きな首相支援の応援団としての役割を持つ。

★その中で参院の立憲民主党は民主主義の根幹を揺るがそうとする外国勢力どころか、首相の陣営の暴挙に正面から立ち向かう。無論週刊誌報道をベースに首相に問いただすだけでは首相の反論を引き出すだけだが、それでも首相は当初の「全く存じ上げない」から「会ったことはない」に微妙に修正している。せめてこの間、中傷動画を作成しSNSで拡散させた本人がネットで事実と認めたり、文春は首相の秘書とのやり取りまで掲載していることを考えれば、同等の資料を入手するとか、動画を作成した人物への接触などが望まれる。

★28日、参院厚労委員会で首相は一連の報道に関して「内閣のメンバーや、秘書と私の間を分断したり、事務所崩壊に至るぐらいのことが平気で書かれている」「私も秘書も含め、他の候補者を批判するようなものを作製、発信、拡散したり、そういったことを第三者にお願いをしたりしたことはないと答えている。秘書に確認した」「大変心外だ」と弁明している。だが文春を訴えることもしないし、そもそも秘書に確認した程度の事態ではない。自民党総裁選選挙管理委員会も総裁選で中傷されたとされる防衛相・小泉進次郎や総務相・林芳正も反応しない。総選挙をゆがめた可能性があるのならば総務省も調査すべきだろうが手を出さない。つまり今後も同様なことは「やり得」となるのだろう。国民は絶えず不正選挙を念頭に置かなくてはならない。(K)※敬称略