象徴する漢字に「災」が選ばれた2018年。締めくくりの12月も、考えさせられるニュースが多かった。東名道あおり運転の裁判では、石橋和歩被告(26)に懲役18年の判決が下された。「セレブの町」南青山では児童相談所を含む施設建設を巡る、港区と地元住民の衝突が耳目を集めた。ハロウィーンばか騒ぎは決して「ノリ」では許されず、山手線初のカタカナ駅誕生に疑問の声が湧き上がった。平成最後の、師走の言葉から-。
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デスクA 東名道あおり運転の裁判は全国が注目したね。
記者A 一般ドライバーにとって人ごとではないからでしょう。横浜地裁には毎回、傍聴券を求めて多くの人が並びました。
デスクB 速度ゼロでも危険運転致死傷罪に問えるかどうかが争点だった。
記者B 裁判長は、あおりからつながる「一連の行為」として危険運転を認定しました。高速道、しかも追い越し車線で車を止めるなんて「危険」以外の何ものでもない。懲役18年という量刑には賛否がありますが、ふに落ちる判決だったと思う。
デスクA 被告の様子は?
記者A 裁判長の問い掛けにも終始反応がにぶい印象を受けました。正直言って、本当に自分が引き起こしたことの重大さを理解しているのか、そして反省しているのか疑問に思った。
記者C 遺族の思いも複雑だろう。長女の言葉は印象的だ。どんな判決になろうとも両親が帰ってくるわけではないが、もうこんな悲しい思いをする人を出したくないという思いが痛いほど感じられた。
デスクC 世間的な影響も大きかった。
記者D 事件以来、ドライブレコーダーを購入する人が急増しました。ひと昔前に比べ、価格的にも手に入りやすくなり、性能もかなり進化している。車の後ろに張る「ドライブレコーダー搭載車」というステッカーも人気です。確かに実際にはつけていなくても「撮影してますよ」とアピールするのは防衛策としては効果的だと思う。
デスクB ハロウィーンでトラックを横転させた若者の逮捕につながったのも防犯カメラだった。監視社会と言われるが、そのおかげで容疑者を特定できた。
記者C 警視庁は防犯カメラ約250台に、周辺にいた人々が撮影した映像まで調べた。根気がいる作業だったと思う。
デスクA 南青山の児相建設問題も注目を集めたね。説明会では相当激しい言葉が飛び交った。
記者D 地元住民から「イメージが悪くなる」「地価が下がる」などの意見が出ましたが、その根拠がよくわからない。また、何であんなに感情的になるのか。全くセレブっぽくない。南青山のイメージを言うのなら、騒動は明らかにマイナスプロモーション。
記者E 今年は特に児童虐待の問題が多く報じられ、どうやって子どもを守るのかを大人がみんなで考えていかなければならない時。そこに暮らす人の意見は尊重しなければならないが、もっとふところを広く持ってもいい。
記者A 明るいニュースだってありました。新語・流行語の年間大賞にカーリング女子の「そだねー」が選ばれた。
記者D ノーベル賞授賞式の本庶さんもかっこよかったよ。和服での出席は川端康成以来。そうそうたるメンバーの中でひときわ目立っていた。
デスクB 言われてみれば本庶さんは、川端に雰囲気も似てるな。平成最後の年末もあと1週間、まだまだこんな明るい話題が続いてほしいね。
<社会>
▼清野英俊・東京テレメッセージ社長
「今後は日本の防災を支えるのに役立ちたい」
3日 平成を代表する「ポケベル」のサービスを、来年9月で停止と発表。
▼山梨県富士吉田市の男(22)
「ノリでやった」
5日 渋谷ハロウィーンでの軽トラック横転事件で、警視庁が関与した15人を特定。特に悪質だった20代の男4人を逮捕。
▼コラムニスト能町みね子さん(39)
「この時代の日本がどんなにしょうもない文化だったのかを、後世に残してしまう」
7日 JR東日本が、山手線新駅の名前を「高輪ゲートウェイ」としたことに、命名撤回を求め署名活動。
▼皇太子妃雅子さま
「少しでも国民の幸せのために力を尽くしていけるよう、研さんを積みながら努めてまいりたい」
9日 55歳の誕生日を前に文書で回答。来春は、いよいよ新皇后に。
▼藤井聡太七段(16)
「一番困る質問がきてしまいました…現段階では保留でお願いします」
同日 トークショーで、女性ファンに好きな女性のタイプを問われ、困惑。
▼順天堂大の新井一学長
「女子の方が精神的成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が高い傾向がある」
10日 医学部の不適切入試をめぐり、2年間で女子47人を不合格にした背景を「コミュ力」と指摘し、大炎上。心理学者らも「非科学的」と批判。
▼石橋和歩被告(26)
「ないと…」
14日 夫婦が死亡した東名あおり運転事故公判で、懲役18年の判決。裁判長に何か言いたいことを問われ、沈黙の後にひとこと。夫婦の長女は判決に「私たちの気持ちを考慮してくれた。ありがとうございます」とするコメントを発表。
▼アパマンショップ平岸駅前店の店長
「店の1階で120本を机に置き、1度に噴射した。可燃性という認識はない」
18日 廃棄のために消臭剤を一斉噴射したため、爆発。42人が重軽傷を負う。
▼ソフトバンク宮内謙社長「市場の反応を真摯(しんし)に受け止める」
19日 世界が注目した上場だが、大規模通信障害、ファーウェイ排除など逆風が重なり、初値は売り出し価格1500円割れ。個人投資家はがっかり。
<政治>
▼安倍晋三首相(64)
「私は、答えようがないわけでありまして」
6日 外国人技能実習生が3年間で69人も死亡していると指摘されて。
▼自由党・森裕子参院議員(62)
「今までの自民党なら、こんな法案を出させるようなことはしなかった。どうしちゃったんだ、自民党」
7日 入管難民法などの改正案の成立に反対し、本会議場の演壇で官邸にものを申せない自民党を皮肉る。
▼産業革新投資機構の田中正明社長(65)
「政府高官が書面で約束した契約を一方的に破棄し、取締役会の議決を恣意(しい)的に無視する行為は、日本が法治国家ではないことを示している」
10日 経産省が最大1億円の役員報酬を急きょ撤回したことに、激怒。取締役全員の辞任を発表。
▼河野太郎外相(55)
「次の質問どうぞ」
11日 日ロ関係関連の質問を会見で4回、完全無視。
▼自民党・小泉進次郎厚労部会長(37)
「妊婦さんに自己負担を発生させるのは容認できないというのが、部会の総意」
13日 妊娠中の女性の外来受診で自己負担が増す「妊婦加算」を批判。厚労省は廃止へ。
▼沖縄県の玉城デニー知事(59)
「既成事実を積み重ね、県民をあきらめさせようと躍起になっているが、工事を強行すればするほど、県民の怒りは燃え上がることを認識すべきだ」
14日 政府による名護市辺野古沿岸部に土砂投入開始に猛抗議。菅義偉官房長官は「引き続き全力で埋め立てを進めていく」。
▼桜田義孝五輪相(69)
「英語ができないから首相を目指すことはやめます」
20日 20年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに向けた多言語サービス推進の会合で。
<国際>
▼中国通信機器大手ファーウェイの孟晩舟(もう・ばんしゅう)副会長(46)
「ファーウェイと祖国を誇りに思う」
11日 米国の要請でカナダ当局が逮捕。中国によるカナダ人の逆拘束も起き、保釈後にSNSに投稿。「紅(あか)いエリート」と呼ばれる中国の重要人物。さらなる米中対立の火種に。
▼マティス国防長官(68)
「あなたは、私以上に価値観を共有する人物を国防長官にする権限がある。私は辞任が適切と判断した」
20日 米トランプ政権の「最後の良心」で軍出身の重鎮が、ついに来年2月の辞任表明。重しが取れたトランプ政権を世界が不安視。