昨年10月に移転した東京・豊洲市場で初となる、新年最初の取引「初競り」が5日早朝に行われ、一番マグロが史上最高額の3億3360万円で競り落とされた。これまでの最高1億5540万円を2倍以上更新するご祝儀価格に、市場関係者や見物客らは騒然。一部からは疑問の声も上がったが、落札した「すしざんまい」を運営する喜代村(東京)の木村清社長(66)は「豊洲もハッピー、築地もハッピー」と前向きだった。一番マグロはその後、築地場外のすしざんまい本店に運ばれ、ご祝儀価格で振る舞われた。

「1万5000貫とれるとすれば、1貫2万円以上」と木村社長は話していたが、この日振る舞われた一番マグロは大トロ398円、中トロ298円、赤身158円で通常料金のまま。直前のテレビ番組のインタビューでは、木村社長がスプーンで中落ちをそぎとって、そのまま女性リポーターの口まで「あーん」と運んで食べさせた。おそるおそる「その中落ち、味見、いいですか」と尋ねるとすぐにスプーンですくってくれた。さすがに「あーん」はなし。親指と人さし指でつまむとはね返ってくる弾力はプリンとして張りがある。骨に厚みがあるので中落ちも分厚い。口の中に入れてかむ。何も味付けしていないのにすっきりした甘さが広がった。深く味わいたかったが、1秒後には口の中からなくなっていた。【寺沢卓】