商売繁盛の神様「えべっさん」の総本社、西宮神社(兵庫県西宮市)で10日、本殿参拝の一番乗りを競う恒例の「開門神事福男選び」があり、約5000人が参加した。トップの「一番福」は広島県福山市の消防士、山本優希さん(22)が勝ち取った。

山本さんは初参加だった。先頭グループの108人を決めるくじ引きでは8番。午前6時、表大門が開かれると、約230メートル先の本殿を目指し絶好のスタートを決めた。ダントツのトップで本殿に到着した山本さんは中学・高校では陸上部に所属。中学時代は棒高跳びで全国大会に出場した。高校時代の50メートルのタイムは5秒7。「最後のコーナーを曲がったとき、後ろから足音が聞こえた」。最後は力をふりしぼり、駆け抜けた。

昨年7月の西日本豪雨では消防士として地元の福山で救助活動にあたった。豪雨の死者は200人を大きく超え、平成に入って最悪の豪雨災害となった。福山市内でも道路が寸断され、土砂災害が発生した。「いまも復旧していない場所もある」と山本さん。被災地へ元気を届けるための全力疾走でもあった。

昨年は私生活では長男が誕生した。福男はその年の福を一身に集めるのではなく、福を周囲に分け与える役割がある。「(被災地)広島の人々に少しでも福と笑顔を届けたい」。平成最後の福男は、力強く語った。