平成最後の女流王位が、初防衛へと踏み出す。

北海道帯広市出身の女流棋士・渡部愛(25)が、昨年、第29期女流王位戦に挑戦し、初タイトルを獲得した。

今年は4月下旬から、防衛戦で全国を転戦。地元帯広での開催も決定した。コンサドーレ札幌の大ファンでもある女流王位。18年に躍進した同郷クラブに負けじと、新たなステージに挑む。

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昨年6月、徳島で行われた第29期女流王位5番勝負第4局、渡部は女流5冠・里見香奈(現在は4冠)から3勝目を挙げ、初のタイトルを手にした。防衛をかけた今年の5番勝負は、4月下旬から6月にかけて全国各地を転戦する。5局のうち、既に5月8日の北海道開催は、地元帯広で開催されることが決まった。

渡部 (昨年の)王位戦は最後まで二転三転。相手のミスもあったので、勝負には運も必要だと感じました。次は防衛戦。ここから、いかに長くタイトルを保持できるかが大事。序盤から仕掛ける自分らしい将棋ができるようにしたい。注目度の高い棋戦なので、地元でいい将棋をして、北海道のファン拡大につなげたい。

タイトルを獲得した女流棋士は、男性棋士とも対局できるようになる。昨年は8大タイトル戦のうち竜王、王座、王位戦の予選に参加。持ち時間の違う棋戦に挑み、新たな刺激を得た。

渡部 女性のリーグ戦は2~3時間。男性の棋戦は4~5時間かけるので、そこが大きな違いかと。時間があると、大事なときに腰を落として考えることができる。考えるほど競り合いになるので楽しかったです。でも、いつもより長いといっても、考え出すと、あっという間に時が過ぎていってしまうんですよね。いい経験になりました。

攻撃的スタイルは、幼少時から変わらず。小学2年時に担任教師の影響で将棋を始めてから、みるみる力をつけていった。

渡部 好きな駒は桂馬。前の駒を飛び越して攻められるところが魅力です。私のスタイルは、自分から攻めるタイプですが、反対に受けが課題。そういうところも今後、研究していけたら。駆け引きや、読みあいが好きで、いろいろ考えながら勝つと、また面白い。将棋は老若男女、誰でも楽しめるのがいいです。

コンサドーレ札幌を応援しており、本業の合間にネット中継で観戦。17年からは、将棋仲間とスタジアムにも足を運んでいる。

渡部 昨季は、札幌ドームでの9月の鳥栖戦と、日産スタジアムでの10月の横浜戦を観戦しました。横浜戦はゴール裏で跳びはねながら。鳥栖戦は(鳥栖の元スペイン代表FW)フェルナンドトーレス選手もじっくり見たかったので、ハーフウエーライン付近で静かに見ました。サッカーは、いろいろな特徴の選手を、うまく組み合わせて敵陣を攻める。将棋と似ていて、ボールや選手の動きを、駒の動きに見立てて見てしまうこともあります。そういうときは、黙って何もしゃべらないで見ています。

今季のチーム状況も細かくチェック。同世代の選手は特に気になっている。

渡部 チャナティップ選手と荒野選手が私と同い年なので、気になっています。昨季も頑張っていましたが、今季も引き続き応援してます。新加入では、FWアンデルソン・ロペス、MFルーカスの両外国人選手の活躍に期待しています。応援用のユニホームを持っていた都倉選手、兵藤選手が移籍してしまったのは残念ですが、チームは毎年変わるもの。新しい戦力を加え、さらに上のレベルにいってくれたらうれしいです。2月23日のアウェーでの開幕湘南戦は、会場(BMWスタジアム平塚)が家から比較的近いので、チケットが取れたらぜひ、見に行きたいですね。

同郷クラブからパワーをもらい、初の防衛戦に備える。【永野高輔】

◆将棋の女流タイトル 女王、女流王位、女流王将、倉敷藤花、女流王座、女流名人に加え、今年から清麗が加わり7つ。現在、女王は西山朋佳(23)、女流王位が渡部、それ以外の4タイトル(新設の清麗はのぞく)は里見香奈女流五段(26)が保持している。西山と渡部は昨年、ともに初タイトル獲得。在位期間は、次の防衛戦終了までとなる。

◆渡部愛(わたなべ・まな)1993年(平5)6月26日、帯広市生まれ。音更鈴蘭小2年時に、当時担任だった教師の影響で将棋を始める。下音更中2年から女流棋士の中井広恵の指導を受け、北海高卒業後に上京。13年10月にプロ入り。18年3月の第29期女流王位戦挑戦者決定戦で清水市代に勝ち、タイトル初挑戦を決め、同年5月からの5番勝負で里見香奈を3勝1敗で破り、女流王位奪取。161センチ、血液型B。