「イチロー市場」の高騰にご意見番が警鐘を鳴らした。イチローの引退表明からネットオークション上には直筆サイン入りのユニホームなどが大量出品されている。テレビ東京系「開運! なんでも鑑定団」でおなじみの鑑定士・前野重雄さん(66)が、真贋(しんがん)に疑問があるイチローグッズに注意を呼び掛けた。

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ヤフーオークション上の「イチロー市場」は最高値を継続中だ。即決価格で1200万円という破格のプライスが付けられたのは2001年(平13)に大リーグ挑戦した時に実際に試合で使用したというユニホーム。それ以外にも高額グッズがめじろ押しだ。

だが、鑑定歴34年以上でご意見番の前野氏は高額出品フィーバーに警鐘を鳴らした。「ネットに掲載されたデータだけで本物か、偽物かを判断するのは難しい」。そう前置きして、リスクを挙げた。「いつ、どこで、誰から、どうやって入手したかなどを証明するものがない場合、金額が金額だけにそれなりの覚悟が必要です」。お宝グッズの真贋判定の難しさを訴えた。

現在、前野氏が所有管理するイチローグッズは、イチロー本人から承諾を得て直接入手したものばかり。マリナーズ時代の01年オールスター出場時の直筆サイン入りユニホーム、04年に試合で使用した直筆サイン入りユニホーム、直筆サイン入りの特注バットなど豪華だ。さらにオリックス時代に寮の自室で使用していた壁掛け時計や、指の血の痕が残る特注グラブなどお宝度も半端ないが、いずれも非売品だ。

イチローは横行する偽グッズに心を痛めていた。「その対策のひとつとしてサインを1、2年で変化させていた。サインの位置やスタイルも変えていた。彼のこだわりはサインにも込められています」と前野氏は明らかにした。鑑定眼を信頼されて「これ本物ですか?」とイチローからプロバスケットボール神様マイケル・ジョーダンのサイングッズの鑑定を依頼されたこともある。「ネット上で出品されているイチローものの中にも、偽物の可能性が極めて高いものを特定しています」と前野氏は断言した。グッズ高騰はイチローの偉大さの証明だが、真贋の証明が怪しいものには、くれぐれもご注意を。【大上悟】