渋沢栄一の活動を紹介している渋沢資料館(東京都北区)の井上潤館長は「知らない人にも身近な存在として興味を持って見てもらえる、いいきっかけになってうれしい」と喜んだ。

館長によると、63年に伊藤博文の肖像画が1000円札に用いられた時も、渋沢は最終候補に残っていた。「偽造防止技術が発達しておらず、ひげがなかったことが、落選要因の1つと聞いております」。04年に1000円札に野口英世の肖像画が用いられた際は、国立印刷局から「練習用に肖像を借りたい」と連絡があったという。今回、国立印刷局から接触があったのは約1年前。約15年前と同じ理由だった。7日に「(新1万円札起用が)決まりました」と報告があったという。館長は「今回も練習用だと思っていました」と驚きを隠さなかった。

渋沢の肖像は単独で写った約50点の中から、1909年の古希を迎えた際に撮影したものを提出した。先方から特に指定はなかったが、館長は「肖像として一番ポピュラーで使用頻度が高かったから」と提出理由を説明。採用については「向こうも同じ考えで、一番知られている肖像が、お札にふさわしいと考えたのでは」と推測している。