日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、会社法違反(特別背任)容疑で4度目の逮捕をされた前日に収録された動画が9日、都内の日本外国特派員協会で開かれた会見で公開された。同容疑者は無実を強調し、数人の日産幹部が「汚いたくらみを実現させるべく仕掛けた陰謀、謀略、中傷」と批判。幹部の実名も語ったが、弁護団の判断でカットされた。弁護団は10日に最高裁に特別抗告の手続きを行う。

黒のジャケットに白のシャツを着たゴーン容疑者は約7分半、切々と訴えた。

まず<1>有価証券報告書に役員報酬を過少記載<2>資産管理会社と新生銀行が結んだ「スワップ取引」の契約者を日産に変更し評価損の付け替え<3>信用保証に協力したサウジアラビア人知人の会社に子会社から入金させた-の3件について無実を主張。4度目の逮捕容疑となった、オマーンの代理店に日産の資金を不正送金し、日産に損害を与えた件は、再逮捕前日の収録だったため語られなかった。

その上で4度の逮捕について「単に事件ではない陰謀、謀略、中傷」と断言。「合併へ向けて進むことが日産の独立性を脅かすかも知れないと恐れた」「自分たちの利益のため、自分勝手な恐れを抱き会社の価値を毀損(きそん)する数人の幹部が汚いたくらみを実現させるべく仕掛けた」と、ルノーとの統合へ脅威を抱いた数人の幹部にはめられたと主張した。

一方で「私は日産の独立性を最も強力に守ってきた。アライアンスの誕生から19年、1度も脅かされたことはない」と強調。「必要な時にリーダーシップを発揮しなければいけない。これは独裁などではない」と自らの正当性も主張した。

ゴーン容疑者は収録時に、一部の幹部の名を実名で語ったが弘中惇一郎弁護士は「法律のリスクを伴う」と弁護団の判断でカットしたと明かした。地検との司法取引に応じた元秘書室幹部が署名した書面も弁護側に開示されているが「ゴーンさんが名前を挙げるのは意味が違う」と説明した。

ゴーン容疑者はこの2年で3回の業績修正、検査問題が解消されない中、解決したと発言したとして現経営陣を批判。「明らかな業績の低下が心配。ビジョンもなく自らを誇る現経営幹部を見ることは悲しくうんざり」と言った。そして「日本と日産を愛している。愛情がなかったら20年もリーダーを務めるなど誰もしない」と訴えた。【村上幸将】