安倍晋三首相は14日、福島県を訪れ、東京電力福島第1原発や東京五輪の聖火リレーのスタート地点となる「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)を視察した。

東日本大震災からの復興より同僚の自民党議員が大事と発言した桜田義孝前五輪相を更迭後、初めての被災地入りだったが、首相は視察で桜田氏の問題には触れず、被災者への謝罪もなかった。視察後、報道陣の問いかけに、「閣僚全員が復興相という政権の方針をもう1度胸に刻み、政府一丸で復興を成し遂げるまで全力を尽くす」と述べるにとどめた。

約5年半ぶりに視察した第1原発では、廃炉に向けた進捗(しんちょく)状況を確認した。「着実に進んでいるが多くの課題もある。今後も国が廃炉、汚染水対策の前面に立って取り組む」と強調。「福島の皆さんとともに、復興五輪の開幕と復興が進む福島の姿を世界に発信したい」と、来年3月から福島で始まる東京五輪聖火リレーの出発に立ち会う意向も示した。

ただ、首相はその前に統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥(い)年選挙」を、乗り切る必要がある。衆院大阪12区、沖縄3区の補選で自民苦戦が伝えられ、地方選の結果も今後の政権運営を左右する。この日の被災地入りを前に火消しを急いだ「桜田ショック」が長引けば、参院選にも暗雲がたれ込める。