天皇、皇后両陛下は18日、今月30日の天皇陛下の退位を報告するため、三重県伊勢市にある伊勢神宮の外宮(げくう)と内宮(ないくう)を参拝された。退位に関連した儀式の一環。移動の際には、沿道に詰めかけた4万3000人(三重県県発表)に笑顔で手を振った。両陛下は60年前のこの日、結婚の報告で同神宮を訪れている。在位中、最後となる今回の地方訪問は、60年の時を越えた思い出深い旅となった。

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前日の雨がやみ、さわやかに晴れた伊勢神宮周辺。両陛下は、「親謁(しんえつ)の儀」で、午前に豊受大神(とようけのおおみかみ)を祭る外宮、午後に皇室の祖神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)を祭る内宮をそれぞれ訪れ、退位を報告した。

モーニング姿の陛下は外宮と内宮で、神職のおはらいを受けた後、正殿に歩いて進み、玉串をささげて拝礼した。歴代天皇が受け継ぐ「三種の神器」の剣と璽(じ)、勾玉(まがたま)を皇居から5年ぶりに携え、2人の侍従が手にして、陛下の前後を歩いた。

皇后さまは白いロングドレス姿で、同様に拝礼。伊勢神宮では、両陛下の長女黒田清子さんが祭主を務めており、外宮と内宮で両陛下の拝礼を見届けた。

両陛下は、皇太子ご夫妻だった60年前の1959年(昭34)4月18日にも、伊勢神宮を訪れた。結婚の儀の直後で、その報告のため、ご夫婦として初めての伊勢参拝だった。またこの日は、長女清子さんの50歳の誕生日。天皇、皇后両陛下として最後の伊勢神宮参拝に、清子さんが祭主として立ち会ったことも含めて、思い出深い旅になった。

伊勢神宮周辺には両陛下を一目見ようと、沿道や駅前を、多くの人が埋め尽くした。両陛下は、車中では窓を開け、車を降りた後は立ち止まり、「ありがとうございました」など寄せられる声に、笑顔で手を振って応じた。その後は同県志摩市の賢島に移動。皇太子時代からゆかりのある志摩観光ホテルに宿泊し、清子さんら伊勢神宮関係者と、夕食をともにした。

三重県によると、伊勢神宮と賢島にはこの日、4万3000人が集まった。

在位中最後の地方公務となった伊勢神宮参拝を終えた両陛下は、19日の帰京後も多忙な日が続く。23日に昭和天皇が埋葬されている武蔵野陵訪問、皇居外で最後の公務となる26日の「みどりの式典」などに臨まれ、退位日の30日を迎える。