中国本土に容疑者を引き渡せるようにする逃亡犯条例改正案をめぐる抗議行動が激化する香港で4日、林鄭月娥(リンテイ・ゲツガ)行政長官が会見を開き、デモ参加者がマスクなどで顔を覆うことを禁じる「覆面禁止法」を制定したと発表した。

集会やデモ行進、暴動でマスクやフェイスペイントで顔を覆った場合、最高で禁錮1年と罰金2万5000香港ドル(約34万円)の刑が科せられる。警察が顔を覆うものを取るよう命じ、従わなかった場合も禁錮6カ月と罰金1万香港ドル(約13万円)が科される。5日午前0時(日本時間同1時)から施行される。

覆面禁止法は、英国の植民地時代の1922年に制定された「緊急状況規則条例」が適用、制定された。同条は行政長官が緊急時に通信や集会など市民の権利を制限したり、立法会の手続きを経ずに法律を設けられるもので、英国の統治に反対する暴動が起きた67年以来52年ぶり、97年の中国への返還後は初の適用となった。林鄭長官は「決定は容易ではなかったが必要。これ以上、暴力がエスカレートしていくのを、許すわけにはいかなかった」と語った。

一方、市民は猛反発し抗議運動が過熱した。民主化運動家の周庭(アグネス・チョウ)氏(22)はツイッターで「香港の終わりの始まり。香港政府は今日マスクを禁止できれば、明日は夜間外出を禁止でき、明後日はインターネットも禁止できます。とにかく、政府の権力は無限大となり、市民の権利と自由が全部奪われます」などと批判した。