香港政府が4日、デモ参加者にマスクやペイントなどで顔を覆うことを禁じる「覆面禁止法」を制定し、5日午前0時(日本時間同1時)から施行したことを受け、香港市内では市民と警察の衝突が激化した。

4日夜、市内で14歳の少年が私服警官に左太ももを撃たれ重傷を負った。5日には覆面禁止法に反対する無許可の抗議デモが行われ、1000人以上の市民が集まったが、地元メディアは警官隊がマスクを着けた男性を強制連行したと報じた。

香港メディア「立場新聞」電子版は、警官隊が5日午後5時半過ぎに突然、マスクを着けた数名の男女を追いかけ、1人の男性をパトカーに連行したと報じた。警官は現場で取材していた記者に、逮捕の理由を説明しなかったという。デモに参加した市民は、マスクを着けた警官隊に「警官がマスクを着けているんだから、我々だって着けることは出来る」と抗議した。

行政長官が、緊急時に通信や集会など市民の権利を制限し、立法会の手続きを経ずに法律を設けることが可能な「緊急状況規則条例」を適用し、覆面禁止法を制定したことに市民の怒りが爆発した。集会やデモなどで顔を覆った場合、最高で禁錮1年と罰金2万5000香港ドル(約34万円)の刑が科されるが、市民はマスクをかぶり続けた。

4日夜には、市民数百人が道路を占拠する中、男性の私服警官が車で乗り込み、口論の末に発砲し、銃弾が14歳の少年の左太ももに当たった。市民もガソリン缶を投げるなど応戦し、警官も頭から流血した。香港警察は会見で、正当防衛であり違法性はないと主張。少年は治療を受け、容体は安定したという。

林鄭月娥(リンテイ・ゲツガ)行政長官は、5分間のビデオメッセージを発表し「暴徒の蛮行で香港にとって暗黒の夜になった。でも政府は屈しない」と対決姿勢を鮮明にした。