会社法違反(特別背任)などで起訴された日産の前会長カルロス・ゴーン被告(65)の弁護団の弘中惇一郎弁護士(74)河津博史弁護士、小佐々奨弁護士が11日、都内の日本外国特派員協会で会見を開いた。

弘中弁護士は、当別背任容疑で

<1>15年12月から18年7月にかけて、UAEの会社「中東日産」からオマーンの代理店SBAに対し計1500万ドル(約16億9800万円)を支出させ、うち500万ドル(約5億6300万円)を実質所有するレバノンの投資会社「GFI」名義の預金口座に送金させ、日産に損害を与えた疑い

<2>信用保証に協力したサウジアラビア人の知人の会社に、子会社から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を入金させた疑惑

が持たれている件について「検察の手元にある証拠で、こちらの犯行を立証するものは1つもない」と東京地検特捜部を痛烈に批判した。

弘中弁護士は、オマーンの件について「SBAに関する支払いですが、日産にとって非常に大きな代理店で、事業のために必要なものを送っただけ」と主張。その上で「なお、検察はマスコミを利用して、ゴーンさんの家族に還流しているとリークした。しかし、証拠上、全くそういう事実がないことが分かった。報道では盛んにSBAにお金を出させ、還流し、ヨットなどに使ったと報じられているが、還流したという証拠は見当たりません。リークに基づいて勝手に書かれた記事と考えている」と主張した。

また、サウジアラビアの件についても「(ゴーン被告の知人の)ジェファリさんに対する日産の支払いが、特別背任とされている事件は、日産の事業のために必要なものを払っただけで、手続きも適正に行われていた。ジェファリさんが日産のために立て替えたものを支払ったもので、何の損害も被っていないので無罪」と訴えた。

質疑応答の中で、海外のメディアから「サウジ、オマーンの人から、皆さんの話を裏付けることを聞いている。検察の言うことは根拠がないとも言っているが」と質問が出た。弘中弁護士は「検察は逮捕した後に、重要な人物の証言を取ろうとしている。つまり、証拠に基づいて逮捕、起訴したのではなく、逮捕の後、何か証拠がないかと、やっきになってきた」と主張。その上で「サウジ、オマーンの関係も、逮捕の後、聞き取りをしているが結果は、お話ししたとおり」とした。両国の訪問の可能性を聞かれると「視野には入れているが具体的なことは考えていない」と答えた。

また、名誉毀損(きそん)で訴える可能性について聞かれると「刑事裁判に集中しているので、そのことは、もっと後に考えたい。刑事裁判としては検察が中心となってやっているが、経産省も無関係とは思っていない」などと答えた。【村上幸将】