9月の台風15号の影響で、千葉県市原市のゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」の鉄柱が倒れ込んで住宅被害が出た問題で13日、約2カ月住宅に倒れ込んでいた鉄柱13本すべてが撤去された。撤去準備作業は先月中旬に開始していた。

撤去作業を無償で行った東京都江戸川区の大手解体業者「フジムラ」によると、1本30~40メートルの鉄柱を3~4つに切断して引き上げる予定だったが、現場で分割は危険と判断し、切断しないまま1本ずつ引き上げた。切断時間が省略されたことで、作業は約2カ月かかる見込みだったが、約1カ月短縮された。今後がれき撤去作業などを行い、今月22日までに全作業を終える予定だ。自宅が被害を受けた会社員松山高宏さん(55)は「早く作業が進んだことに感謝しています」とホッとした様子だった。

今後は補償が争点となる。ゴルフ練習場側は裁判外紛争解決手続き(ADR)を利用し、住民への補償を進めていく意向で、すでに手続きを進めている。次男夫婦の自宅が被害を受けた会社員湯浅泰一さん(65)は「新築ではないので、どのような評価をされるか心配」と不安を口にした。

住民が元通りの生活を行うには、程遠い。湯浅さんによると、当初、次男は湯浅さんの自宅に、次男の妻と生後5カ月の孫は実家と、離ればなれに暮らしていたが、ようやく半月前、一家3人が暮らせる仮住まいのアパートが見つかった。

2階にあったクローゼットは壊れて洋服はすべて傷んだ。1階にあった電子レンジや冷蔵庫などの家電製品は、いずれも新しく買い直したという。湯浅さんは「大きな出費。撤去はありがたいが、本来、何もなければ、普通に暮らしていたはずなのに」と複雑な心境をのぞかせた。【近藤由美子】