2020年度(21年1月)開始の大学入学共通テストについて、萩生田光一文部科学相は17日、国語と数学で予定していた記述式問題の導入を見送ると発表した。採点ミスの可能性や受験生の自己採点と結果の不一致などが解決できないと説明。受験生らに対し「ご迷惑をおかけし誠に申し訳ない」と謝罪した。英語の民間検定試験に続く目玉施策の失敗で、大学入試改革は骨抜きになった。

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見送りの理由は主に3つ挙げた。<1>採点を担当する民間業者の実際の採点体制が現時点で分からない<2>採点ミスゼロを期待できない<3>受験生の自己採点と採点結果の不一致の改善が困難で、出願大学の選択に支障が出る。大学入試センターから最近これらの現状報告があり「受験生の不安を払しょくし安心して受験できる体制を整えることは困難」と判断したという。

しかし、これらの課題は、教育現場や野党が以前から指摘、批判してきたもので、文科省内でも認識されていたはず。ずさんな制度設計が露呈し、実施が約1年後に迫るまで高校生を翻弄(ほんろう)した責任は明らかだ。萩生田氏は「特定の人の責任でこうなったのではない。見送りの決断は私の責任」と釈明した。

目玉は頓挫したが、文科省は、センター試験から共通テストへの変更は予定通り実施する方針だ。大学入試センターとともに国数の配点、時間配分などを急ぎ協議する。マークシートでも、センター試験よりも思考力や判断力を測れる問題を用意するという。記述式は「まっさらな状態」とし、英語同様、大臣直下に年内に設置予定の検討会議で各大学の個別入試での活用などを検討する。教育現場からはセンター試験継続を求める声も多く、なお混迷が続きそうだ。

【記述式問題とは】▼思考力、判断力、表現力をはかるため国語数学1、数学1Aで各3問出題。国語は最長80~120字。国語は5段階の総合評価。数学は点数化▼約50万人の2科目分を約1万人が約20日間で採点。採点は約61億円で受注した教育大手ベネッセ・グループの学力評価研究機構が担当。採点者にはアルバイトも予定▼国語の問題は採点にブレが出にくいよう、答え方にさまざまな条件を設定。プレテストでは採点にブレが生じ、自己採点と実際の結果の不一致が3割に▼数学のプレテストは、問題に日常生活の情景描写や太郎さんと花子さんの会話などが使われ設問が長め。正答率も3~10%。