ネット上では「アゲアゲさん」と呼ばれ、「将棋ユーチューバー」として活躍する将棋のアマチュア強豪、折田翔吾アマ(30)が、プロ入りをめざす棋士編入試験の5番勝負第2局、出口若武四段(24)戦が23日、大阪市の関西将棋会館で始まった。

折田アマは11月25日の5番勝負第1局で黒田尭之(たかゆき)四段(23)に勝利し、幸先のいいスタートを切った。「試験官」にあたる四段のプロ棋士5人と対局し、3勝すれば合格となる。月1回のペースで「試験」が実施される。

出口は今年4月にプロ入りした若手棋士だ。本年度の成績は18勝12敗。

午前9時45分ごろ、折田アマは緊張の面持ちで対局室に入り、第2局の始まりを静かに待った。

第1局の振り駒により、第2局の先手は折田アマ。午前10時、お互いに深々と一礼し、対局を始めた。折田アマは、しばらく考えて飛車先の歩を突いた。出口は飛車先の歩を突き返した。

折田アマは大阪府出身。棋士養成機関・奨励会の最上位の三段リーグまで昇段したが、26歳の年齢制限にかかり奨励会を退会した。プロ棋士への道を断たれるときの心境について「1つの人生が終わった。死んだという感覚に近かった」。

それでも退会後は将棋と関わり続けた。将棋講師の仕事をしながら、16年春から動画共有サイト「ユーチューブ」にチャンネル名「アゲアゲ将棋実況」を開設した。自身が指すインターネット将棋の実況を中心に、ほぼ毎日、コンテンツを投稿している。現在のチャンネル登録数は約3万5000人。総視聴回数は2100万回以上。ファンからは「アゲアゲさん」と呼ばれている。

プロの夢をあきらめなかった折田アマに巡ってきた大きなチャンス。8月30日に行われた公式戦の対局でプロ棋士に勝ち、プロ棋士相手の直近の公式戦成績を10勝2敗とし、プロ編入試験を受けるのに必要な「最近の公式戦で10勝以上、かつ勝率6割5分以上」の条件を満たした。

持ち時間は各3時間。夕方以降に決着する見込み。