2020年東京オリンピック(五輪)公式映画の監督を務める、河瀬直美監督(50)の国内で初めての大規模特集上映「映画監督 河瀬直美」が19日、都内の国立映画アーカイブで閉幕した。最終上映では、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で2007年(平19)に審査員特別大賞「グランプリ」を受賞した「殯(もがり)の森」が上映された。

昨年12月24日に始まった今回の特集上映にあたり、国立映画アーカイブは現存する原版から、最良のフィルムやデジタルの上映素材を作製した。「殯の森」も、英語の字幕が付いた35ミリのニュープリントで上映された。河瀬監督も観客とともに上映を鑑賞し「(劇場で)10数年ぶりに見ました。こうした機会をいただけて感無量」と感激した。

上映後のティーチイン(質疑応答)では、観客から「リスペクトする監督は?」と質問が出た。河瀬監督は「よく聞かれるんですが…あまり映画を見ないので。すみません」と言い、苦笑いした。同じ質問が再び出ると「もちろん(他の監督を)リスペクトしているとは言えると思いますが、こんな映画監督をリスペクトしているというよりは、育ててくれたおじいちゃん、おばあちゃんをリスペクトしている人間が、映画を撮っているということで」と言い、笑った。

また、観客から「東京2020公式映画、頑張ってください」とエールを送られる一幕もあった。河瀬監督は、左拳を力強く握り締め、ガッツポーズを作って壇上から応えた。

河瀬監督は、国内で初めての大規模特集上映の千秋楽に当たり、「殯の森」の製作スタッフも壇上に招いて、率直な思いを語った。

「全作品…全て見ていて泣けてきて。間違いないくらい、重箱の隅を突くくらいの編集をしている。でも客観的に数年たって、見せていただいて…それぞれの時代の河瀬直美を褒めて上げたいのは、いつの時代も諦めていない。この世界を、1ミリでもいい方向に向けたい。おこがましい言い方をしてしまったら、ごめんなさい。でも、表現者は、そうあるべき。この(特集上映の)話をいただいて、映画人として、この空間にいたいと思った」

河瀬監督は最後に「俳優、スタッフと、この日本で映画を作っているという自負を、世界に伝えたい。お客さまが神様です」と力強く言った。そして、観客から送られた花束を手にすると、笑顔で降壇した。【村上幸将】