東京都は14日、都内在住の2人が、新たに新型コロナウイルスに感染したと発表した。13日に感染が判明した、70代の男性タクシー運転手が所属するタクシー組合支部の50代女性従業員と、男性運転手が参加した新年会が開かれた屋形船にアルバイトで勤務する70代男性。この男性は新年会の前、中国・武漢からの旅行者を接客しており、身近な屋形船の宴会から、感染が広がった可能性がある。

国内の感染確認は259人に増え、急速に感染拡大の様相を呈してきた。

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東京都によると、新たに感染が確認された2人は、13日に感染が判明した男性運転手の「濃厚接触者」だった。入院しているが、重症ではないという。

1人は、男性運転手が所属する個人タクシー組合支部の女性従業員。もう1人は、男性運転手が参加して、1月18日に新年会が開かれた屋形船のアルバイト男性従業員だ。

男性従業員は新年会当日に勤務していたほか、1月15日か16日、中国・武漢からの旅行者を接客したと話している。同月20日に倦怠(けんたい)感で勤務先を早退。27日に入院した。運営会社は、15日から屋形船の営業を自粛する。

一方、組合支部の女性従業員は、新年会には参加していなかった。23区内の組合事務所に勤め、男性運転手とは事務作業などを通じて、接触があった。2月4日に嘔吐(おうと)などの症状が出たが7日まで勤務し、10日に入院。勤務中は電車で移動していた

都は2人について、当初「タクシー運転手との接触は想定していなかった」と述べた。入院中の2人の行動歴を確認する中、男性運転手との接点が浮上した。

新年会には男性運転手の妻を含め、約80人が参加し、約10人が発熱や肺炎などの症状を訴えている。ほかに、屋形船の他の従業員やタクシー組合支部の従業員、医療機関関係者ら、男性運転手との濃厚接触者は約100人もおり、感染が広がる恐れがある。

男性運転手は、新年会から11日後の1月29日、発熱し都内の医療機関を受診。今月3日の再診で肺炎像が確認され、入院を経てウイルス検査で、13日に感染が判明した。最初に医療機関を受診するまでの行動はこれまで不明だったが、都は屋形船での新年会が、感染拡大の「1つのポイント」になったとみている。

男性運転手の義理の母は、同ウイルスに感染し、13日に国内で初めて死亡した神奈川県の80代の女性。男性の妻も含めた親族間の接触の調査も、進んでいる。

国内の感染確認者は、中国に次ぐ数になった。加藤勝信厚労相は現時点での国内流行を認めていないが、感染経路が把握しきれないケースも多く、感染拡大に歯止めがかからない。政府の見解とは対照的に、事態はますます深刻だ。