ネット上で「アゲアゲさん」と呼ばれる、「将棋ユーチューバー」の折田翔吾アマ(30)が25日、念願のプロ入りを果たした。東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた棋士編入試験5番勝負第4局で、本田奎(けい)五段(22)を下した。これで3勝1敗とし、合格。4月1日付でフリークラス四段となる。プロ棋士養成機関「奨励会」を退会し、この試験で合格した例は2005年(平17)の瀬川晶司現六段(49)、14年の今泉健司現四段(46)に次いで3人目となる。

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折田が回り道の末に夢をかなえた。棋王戦5番勝負の挑戦者の本田との混戦を、最後に制した。「信じられない。手術台で眠らされ、好きな夢を見ていいと言われたような不思議な感じ」と、喜びをかみしめた。

11年4月から16年3月までプロ棋士養成機関「奨励会」三段リーグに在籍。「26歳までに四段になれなければ、退会」という年齢制限で、一度は道を断たれた。先の展望もなく始めたユーチューブで将棋に携わりながら、アマ棋戦で強豪の仲間入りを果たした。2年前から編入試験を意識し始めたという。昨年8月にアマ枠で参加したプロ公式戦での直近成績を10勝2敗とし、受験資格を得た。

今回の試験の受験料(50万円)は、クラウドファンディングで募った。約500人から500万円以上が集まった。受験料のほか、「試験に向けての準備、練習対局の遠征費などに使った」と振り返る。すべては合格のため。「孤独だった奨励会時代と違い、視聴者の応援がモチベーションになりました」。大きな期待に応えることができた。

アマ仲間に背中を押された瀬川、勤務先の介護施設の人たちを中心に支えられた今泉と違うのも、時代の流れだろう。その2人はこう歓迎している。「前期の銀河戦で負かされたので、ぜひ折田君と戦いたい」。

折田は会見で、「ストーリー性のある棋士になりたい」と話した。瀬川、今泉はフリークラスで規定の勝率を満たし、順位戦への昇級を果たした。「アゲアゲ物語第1章は終わり。第2章、第3章と続けたい」。エンタメ性を出しながら、プロとして大きな舞台に立つことも夢見ている。【赤塚辰浩】

◆折田翔吾(おりた・しょうご)1989年(平元)10月28日生まれ。大阪市阿倍野区出身。小6でインターネット対戦に夢中になり、04年、プロ棋士養成機関「奨励会」に6級で入会。森安正幸七段門下。三段リーグには11年4月の第49回から入り、16年3月に年齢制限により退会。居飛車党。ユーチューバー、将棋講師として活動中。