さいたま市の埼玉県庁前の歩道で16日夕、女性が刺殺された事件で、女性はさいたま少年鑑別所の統括専門官の浅野法代(のりよ)さん(53)、現行犯逮捕された浅野正容疑者(51)は文教大人間科学部臨床心理学科の准教授で別居中の夫であることが17日、分かった。犯罪心理学が専門の正容疑者は「刺したことは間違いない」と供述しているが、動機については「言いたくない」と話している。

法代さんは午後5時半まで勤務し、職場近くの官舎に帰宅。自転車で買い物に出掛けようとしたところを、待ち伏せしていた正容疑者に襲われた。正容疑者が後ろから自転車をつかんで倒し、馬乗りになって刃物で胸部を刺す様子を通行人が目撃しており、強い殺意があったとみられる。

法代さんは昨年4月、さいたま少年鑑別所に赴任。官舎には夫と子ども3人の5人で入居申請していた。家族は県警に「数年前から夫婦仲が悪かった」と話しており、正容疑者は官舎には住まず、つい最近、川崎市からキャンパスのある埼玉県越谷市に引っ越したという。県警は別居が続き、鬱憤(うっぷん)を募らせていたとみている。

文教大によると、正容疑者は岐阜県出身。大学院修了後に法務省職員となり、少年鑑別所と刑務所で計12年勤務していた。法代さんとは職場で知り合ったとみられる。文教大には07年に採用され、15年、准教授に就任した。

○…正容疑者の専門は犯罪心理学で非行や犯罪の発生のメカニズムを研究していた。ゼミは専門職を目指す学生に人気があり、学生とともに刑務所などを訪問し、加害者に対する教育、被害者支援の実践活動をしていた。記者会見した人間科学部の益田勉学部長は「性格は温厚で物静か。大変驚いている」と話した。近藤研至学長は「浅野先生がいるから入学したいという問い合わせもあった」という。学外では犯罪に遭った人をサポートする「埼玉犯罪被害者援助センター」の理事を務めていた。