学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制されたためなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川氏に計約1億1000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻側は同日「改ざんは佐川氏の指示だった」と記した赤木さんの手記を公表した。自殺直前には「最後は下部がしっぽを切られる」とノートに書き残していた。

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大阪市内で行われた会見の冒頭、妻側の代理人弁護士が妻のメッセージを読み上げた。「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、だれがなんのためにやったのか。真実を知りたいです。佐川さん、どうか、改ざんの経緯を、本当のことを話してください」。夫の口癖は「僕の契約相手は国民です」。実直な公務員だった夫が、なぜ自ら命を絶ったのか。いまなぜ、提訴に至ったのか。メッセージには妻の悲痛な思いが込められていた。

妻側は同日、A4用紙7枚に記されていた「手記」を公表した。18年3月に自殺した赤木さんは、17年2月に森友学園問題が発覚後、財務省本省からの指示の対応に当たっていた。手記は18年2月ごろに書かれたとみられ、赤木さんのパソコンに保存されていた。

森友学園問題について「前代未聞の事案」と説明。「決裁文書の差し替えは事実で、元はすべて佐川理財局長の指示です」「森友事案はすべて本省の指示。本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」などとつづっている。

当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の17年2~3月、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある決裁文書の改ざんを指示したとされる。3、4回にわたり改ざん作業を強制されたとしている赤木さんは「パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けない」とつづる一方で、「抵抗したとはいえ、関わった者としての責任をどうとるか」と記している。自殺直前にノートに書き残した文章がある。

「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府」(原文ママ)。

夫の死の真相を知りたい-。妻が闘うことを決めた。【松浦隆司】