政府が新型コロナウイルス対策として16日、所得制限を設けず全国民に一律10万円を給付する調整を始めた。

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10万円一律給付の方針が決まるまで、政府の対応は迷走した。この金額はもともと、公明党だけでなく自民党の若手、野党も3月から求めていた。巨額な予算が必要で財務省が難色を示し、首相時代のリーマン・ショック対策で1万2000円を定額給付した麻生太郎財務相も、貯蓄に回ると懸念し、1度は「減収世帯に30万円」に決まった。

しかし、対象や支給の仕組みが複雑で、国民の評価はさんざん。対象を絞りたい国のねらいもにじんだ。関係者は「首相は感染症対策と経済対策を見誤ったのではないか」と指摘する。

30万円案を首相とともに決めたポスト安倍、自民党の岸田文雄政調会長の顔も、つぶす結果になった。

公明党と自民党の二階敏博幹事長が最後は首相を追い込んだ。支持母体の強い要望があった公明と自民党大ベテランに共通するのは「世論察知力」。布マスク2枚の全世帯送付に466億円かける金銭感覚とは別物だ。国民生活の現実を見誤った首相は、与野党の声を丸のみするしかなかった。

 

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◆これまでの経済対策の主な流れ

▼3月中旬 現金や商品券の一律給付案が浮上。同26日、自民党内から国産の「お肉券」「お魚券」商品券案が浮上するが批判殺到し見送り。

▼4月3日 減収世帯にのみ30万円の給付案をとりまとめる。

▼同14日 自民党の二階俊博幹事長が「所得制限つきで一律10万円給付」を求める。

▼同15日 公明党の山口那津男代表が「所得制限なしで1人10万円給付」を求める。

▼同16日 政府与党が所得制限を設けずに一律10万円給付する調整開始。