新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例として、医科に続き、歯科でも初診からオンライン診療が開始される。空気中に漂う細かい粒子のエーロゾル発生に伴い、歯科は医科以上に感染リスクが高い職業ともいわれるが、マスクや防護服不足の中、独自の感染防止策を取りながら診療を続けている。歯学博士の照山裕子氏に、歯科を取り巻く状況や不要不急の外出自粛の中での受診基準を聞いた。

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歯科の中でも教育機関でもある大学病院は外来診療を休止し、緊急対応にとどめるところもあるが、かかりつけ医の役割を担う一般歯科は新型コロナウイルス感染予防に細心の注意を払い、診療を続けるところが多い。激しい痛みを取り除くための治療は休止できないからだ。3つの密を避けるため、待合室を使わず、診察まで自家用車で待機してもらうケースもある。

マスクなどの医療資源不足は深刻だ。照山氏によると、不足しているものはマスク、グローブ類、消毒用薬品、感染予防ガウンやキャップ。診療を続ける歯科医師は「物理的にマスクや消毒薬が不足する中、いかに診療の質を保つか」「自分が感染して患者さんや家族にうつしたら」といった不安が尽きないという。

医療資源不足の中、歯科医師はあらゆる資材を使い、コロナ感染予防策を講じている。プラモデル改造で使われるプラスチック板を通販サイトで購入し、フェースシールドを作製。診察台用ヘッドカバーでヘアキャップを自分で作る医師もいる。飛沫(ひまつ)を防ぐため、顕微鏡をポリ袋で覆って診療する医師もいる。照山氏は「少ない医療資源をコロナ最前線で勤務する医療従事者に優先的に回したい、との思いも強い」と話す。

厚労省もHPで、特に高齢者に対するコロナ感染予防として、運動や食生活とともに、口腔(こうくう)ケアを挙げている。照山氏は「口の中が不衛生だと、細菌性の肺炎リスクが上がるので、万が一、コロナ感染した際、重症化しやすいことは明らか。誰もがコロナにかかる可能性がある時代なので、命を守るためにも、口腔ケアが大事」と強調する。

不要不急の外出自粛の中、歯科受診してよいのかと悩む人も少なくない。照山氏は「自己判断ではなく、担当医の指示を仰ぐのが一番です」とアドバイス。その上で「痛みがあれば迷わずお電話を。かめないことで栄養がとれず、免疫が落ちるのは悪循環。クリーニングについては、糖尿病や人工透析中など持病がある人は、歯周病が悪化すると、命に関わることもあります。定期的なチェックを欠かさずに」と話している。【近藤由美子】