今月1日に熊本県水俣市で開かれた伊藤信太郎環境相と水俣病の被害者団体などとの懇談で、環境省側が出席者の発言中にマイクの音を切り発言をさえぎった問題を受けて、伊藤環境相は8日、水俣市を訪れて患者・被害者らと面会し、直接謝罪した。

「環境省の者が発言中にマイクの音を絞り、本当に申し訳ないことがあった。心からおわび申し上げたい。本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げた。

1日の懇談会で環境省側は、団体の代表者らが切実な思いを訴えているさなかに、3分の持ち時間が過ぎるとマイクの音量を切ったり、発言をさえぎる対応をした。現場で一部始終を見ていた伊藤氏は抗議を受けたが「私はマイクを切ったことについて認識していません」と述べ、発言者の声も聞こえていたとして、その場で役所側に特段の対応は取らなかった。

大型連休を挟んだとはいえ、1日の会合から1週間も経過した後で水俣にやってきた伊藤氏には、出席者から厳しい意見が相次いだ。「患者や患者団体を愚弄(ぐろう)した、乱暴なやり方。環境省の歴史に消しがたい汚点を残したと思う。こんなことは前代未聞だ」との指摘や「(発言時間は)3分では正直難しい。10分でも足りないと思う」と、発言時間を3分に設定してきた環境省側の判断への疑問の声も出た。

また「謝罪に来られたことは感謝したいが、今朝までは(水俣病を担当する特殊疾病対策)室長が来ることになっていたのが急きょ大臣が来られたのは、ことの重大さに気付いたからか」と、急きょの訪問への疑問や「環境大臣にも責任がある。同席した大臣自ら、司会者に監督指導すべきだったがやらなかった、司会者だけの問題ではなく環境大臣を含めた環境行政のあり方に問題がある。根本的な所を直さないと、今後も続く」と、伊藤氏自身の責任を問う指摘もなされた。

伊藤氏は、発言者の発言時間として設定された「3分」について「3分で何十年の苦しみを聴くのは難しい。そこを含めて反省し、もう少しみなさんのお気持ちに添って、十分な時間をとれるようにしたい」と述べ、同じ日の午後に慰霊式と懇談会が行われてきた日程を見直す必要性にも言及。「人の気持ちを大事にする政治を進められるように進めたい」とも述べた。

一方で「環境大臣は(内閣改造のたびに)毎年変わってしまう。私が留任したいという意味ではなく、4年くらいはやらないといけないとつくづく思う。そうすればみなさんとの関係性も深まる」「内閣(の大臣)が替わるのは私の力では止められないが、一生懸命勉強して期待に応えられるような仕事をしたい」と、自身の立場に触れる場面もあった。