ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が8日、都内で会見を開き、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(54)から性的暴行を受けたと17年に実名を公表して明らかにした後、漫画家はすみとしことA氏を含む3人からツイッター上で事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷の投稿で精神的苦痛を受けたとして、東京地裁に損害賠償などを請求する訴訟を起こしたことを明らかにした。8日午前、訴状を東京地方裁判所民事部に提出した。

伊藤さんは今回、訴訟を起こした理由について「(誹謗中傷ツイートを)見なければ良いと自分に言い聞かせていたが、1年たっても2年たっても消えず、自分が我慢していればいいわけではなく、アクションを起こさなければ終わらないし、こういうことを発信しても良いということにもつながる。何らかのアクションを起こすべきと考えていた」と説明した。

また、訴訟を起こしたタイミングが今になった理由については、17年に山口氏を相手に起こした民事裁判が、19年12月18日の東京地裁で勝訴したことが「1つの区切り」だとした。勝訴までの2年間は「民事でエネルギーを使っていた。自分自身、真正面から向き合って争うのが難しかった。そこにどれくらいの意味があるか分からなかった」とした。一方で「控訴審はありますけども今回、踏み切れたのは、追い込まれる人のケースが絶えない。自分もその一人なので、具体的にそういう動きをした」と語った。

質疑応答の中で、プロバイダー側に発信者情報の開示請求をしたかと質問が出た。代理人弁護士の山口元一弁護士は「今回は開示請求をしていません」と答えた。またA氏のツイートをリツイートしたことで今回、訴えたB氏はクリエーター、C氏は医師だと明らかにした。

伊藤さんは、同弁護士に続いて「米国のツイッター本社に請求しないといけないので時間がかかるため」と説明。その上でA氏のツイートとB氏、C氏のリツイートについて「開示請求が必要のない方々、自分たちで調べられる範囲だった」と説明した。

伊藤さんは、ツイッター以外の、他のプラットフォームへ投稿された誹謗中傷に対して、訴訟を起こすかと聞かれると「今後、他のプラットフォーム(の投稿)への訴訟は順次、準備を進めている次第です」と語った。その上で「やはり批判と誹謗中傷は大きく違う。批判は、その人の意見や行動に対して議論するものであって、人格攻撃ではない。発信する前に、何に対してか、その人と顔を向かって議論できるのか、建設的な議論が出来る内容なのかを考えていただければ」と語った。

そして「乗り越えていくのは本当に難しいこと。乗り越えるだけでなく、被害があったこととともにそれとともに、生きていかなければならないことも苦しい、二重の負担がある。他の人には経験して欲しくない…そして、次の世代に引き継いでいって欲しくないもの。私たちの世代で終わりにしたいことだと思っているので、今回、アクションを起こしました」と訴えた。