昨年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で、公選法違反の罪に問われた前法相の衆院議員河井克行被告(57)と、妻の参院議員案里被告(46)の初公判が25日、東京地裁(高橋康明裁判長)で行われ、夫婦ともに無罪を主張した。検察側は現金を受領した計100人の名前、状況などを突きつけたが、克行前法相側が、地元議員らの刑事処分を見送る「裏取引」があったとして裁判の打ち切りを要求。夫妻側VS検察の全面対決となった。

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元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士 最大の争点は、渡した金の趣旨だ。票のとりまとめを依頼する買収目的だったのか、河井被告が主張するように陣中見舞い、当選祝いといった政治的慣習だったのか。受け取った議員や首長の取り調べ時の録画・録音の勝負になる。検察の取り調べが強引だったと主張している証人もいるようだが、録画・録音内容次第だ。ただ、120人の証人すべてが証人尋問で捜査段階の供述を翻すとは考えにくい。検察側は、弁護側の徹底抗戦を予想してこれだけの数を用意したのだろうと思う。

問題は、何回も金をもらった人も金額が多い人も刑事処分せず、おとがめなしとしたことだ。公選法は司法取引は適用されない。今回、検察の裁量で不起訴にし、事実上の司法取引をしたのは、政治家が手を付けたがらない公選法も法改正して司法取引の対象にすべきだという、検察の投げかけではないかと思う。