安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選の投開票が14日、行われ菅義偉官房長官(71)が第26代総裁に選出された。両院議員総会で実施され、国会議員票と都道府県連の地方票の合計で争われた。菅氏は過半数の377票を獲得して圧勝した。岸田文雄政調会長(63)は89票、石破茂元幹事長(63)は68票だった。きょう15日に新役員人事、あす16日に臨時国会が召集され首相指名選挙を経て第99代首相に指名される。

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菅氏圧勝で終わった総裁選。告示前から、主要派閥の支持で「菅1強」の構図が固まっていた。無派閥の菅氏を派閥の力が圧勝に押し上げる、奇妙な戦い。各派閥の関心は組閣人事で、選挙戦のさなかから「菅氏が人事に着手したらしい」などの情報が飛び交った。

自民党の派閥は政策集団になったといわれるが、総裁選では毎回、権力闘争の基本「数の論理」の最前線になる。長期政権になった第2次安倍内閣も、改造を重ねるごとに派閥推しの登用が増加。昨秋の改造は「在庫一掃」のひどさが酷評された。1強の安倍晋三首相でも、派閥のバランスを取るのがお決まりだった。

総裁選での「菅1強」は、国政選挙連勝などを積み重ねた「安倍1強」とは異なる。総裁交代を機に勝ち馬に乗り、主流派になりたい「派閥の論理」が支えた1強だ。論功行賞で派閥に配慮しすぎれば、国民に批判される。無視すれば派閥の不満がくすぶるだろう。

組閣の人材登用条件の1つに「改革意欲」を挙げた菅氏は、就任会見で「改革意欲のある人はいろいろな派閥にいる」と、微妙な言い回しをした。派閥に配慮せず、国民が共感できる布陣にできるかどうかが、本当の「菅1強」へと踏み出せるかどうかの分かれ目になると思う。【文化社会部次長 中山知子】