昨年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われている参院議員の河井案里被告(47)の公判が22日、東京地裁で開かれ、共謀したとされる夫で元法相の衆院議員河井克行被告(57)が検察側証人として出廷した。

克行被告は検察側尋問2問目で「(選挙区は)広島3区ですか」と聞かれると、「裁判長!」と大きな声で切り出した。「弁護士の皆さんと協議や相談ができていない状態」と説明。「私自身、刑事被告人の立場に置かれた状況なので、必要なことは私自身の裁判で申し上げていきたい」と強調した。その後も「必要なことは私自身の裁判でご説明する」を繰り返し、証言をほぼ拒否。案里被告は目をつぶったり、下の方をじっと見つめたり、終始うつろな表情だった。

克行被告は9月15日に弁護人全員を解任し、あらたに弁護人を選任したばかり。地裁は夫妻の公判を分離し、案里被告の審理だけが続く。克行被告は証人として23日も出廷する予定。

元東京地検・特捜部副部長の若狭勝弁護士は克行被告が証言を拒否し続けたことを「戦略的に拒絶権を使った」とみている。「自分の裁判で話すことを完全に詰め切れていない場合、案里被告の事件の証言に縛られてしまう可能性がある。これだけ無罪を争っている事件ではありえること」と話した。9月に弁護人を解任したことは「当時、解散総選挙が近々あるのではと考え、その準備をした可能性もある」とした。

克行被告は広島県内の政治家ら計100人に計2901万円を渡し、うち県議ら5人には案里被告と共謀し、計170万円を渡した疑いが持たれている。【近藤由美子】