豊島将之竜王(叡王=30)に羽生善治九段(50)が挑戦する第33期竜王戦第3局が京都市の仁和寺で行われた。7日朝9時からの2日制で始まった対局は、8日午後7時51分、172手の激戦の末、初防衛を目指す後手の豊島が羽生を破り、対戦成績を2勝1敗とした。前人未到の通算タイトル100期を目指す羽生は、勝てそうな局面もありながら、終盤に攻めか受けかの局面で攻めを選んで逆襲に遭い、黒星が先行した。

投了後、羽生は首をうなだれ、脇息に左ヒジを置いてほおづえを突いた。「ちょっと分かれのところは失敗している気がした。もしかして何かあったかもしれないが、分からなかった。攻められた時の応接に問題があった」と振り返った。

対局場は世界遺産・仁和寺にある宸殿(しんでん)。第1局は矢倉、第2局は角換わり。第3局の相掛かりは今シリーズ初めての戦型だった。

境内の紅葉が色づく中、静寂の包まれた対局場で1日目から長考合戦が繰り広げられた。2日目夕方から激しい戦いがスタート。1つのミスが許されない激しい攻防戦。終盤、リードを奪われた羽生は1度は逆転するも、最後は相手の鋭い寄せに押し切られた。

羽生は17年に竜王を奪取し、自身の通算タイトル獲得記録を99期に更新。だが、18年の名人戦、棋聖戦、さらに竜王戦7番勝負で敗れて竜王を失い、27年ぶりに無冠となった。羽生にとって、今期の竜王戦7番勝負は、2年ぶりのタイトル戦だった。

7冠制覇、永世7冠など、数々の金字塔を打ち立てた将棋のレジェンドが通算タイトル100期を懸けた大勝負で勝ち星で先行を許した。「変わらず次も全力を尽くしたい」と巻き返しを誓った。

一方、激戦を制した豊島は、「形勢はよく分からなかった。(164手目に後手5三同歩と)銀を取って詰みかなと思った。すぐ次があるので、コンディションを整えて頑張りたい」と話した。

竜王戦7番勝負は先に4勝を挙げた方がタイトルを獲得する。第4局は11月12、13日に福島市で行われる。