縄跳びの「8重跳び」ギネス記録に挑む“跳人”がいる。京大大学院卒で、脱サラしてプロ縄跳びプレーヤーとして活動する森口明利さん(31)。現在は17年1月に達成した「7重跳び」ギネス記録保持者だ。各分野のスペシャリストで構成するチーム「八重SAKURA」のサポートも受けながら、明日21日に愛知県内で未知なる記録に挑む。

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「ジャンプするのが好きなんです」。森口さんは、サルを思わせるように軽々と跳びはねる。本番に向けて「体の状態は上がっています。会場の床の好条件やアドレナリンを加えれば8・3重跳びまで出来る自信はある。まだ1度も成功したことはないのですが…」。2重跳びから5重跳びまでの練習ルーティンで調整し、胸を張った。

福井県出身だ。大自然の中で「川なんかも跳び越えて遊んでいました」と野山で身体能力を培った。小2の校内縄跳び大会で優勝して以降、賞状は多数。中学では「ジャンプ出来るから」と野球、サッカー、剣道を含む4つの選択肢からバドミントン部で県大会に出場した。高校は生物部で「先輩がイチョウに精子があることを発見したので、観察していました」と内閣総理大臣賞も受賞。ブレークダンスで体幹も鍛えながら、縄跳びを本格的に始めたのは京大工学部時代のサークル「MTTR」からだ。

京大大学院卒業後は福井県内の会社に就職し、メキシコでも活躍したエリートサラリーマンだった。17年1月、兵庫・淡路島でのイベントで「7重跳び」ギネス記録を達成。「正直、7重が跳べたらプロになろうと思っていた」と退社を決断。19年8月の「8重跳び」初挑戦は失敗したが「7・94」と手応えは得た。

縄は正確にはワイヤロープを使用する。ワイヤの企業の協力も得たロープは約2・1メートルでわずか21グラムだ。持ち手も8重跳びに特化したものを開発。「大学で金属の研究をしていたので、道具の素材選びなどは京大出身が生きているかも」。成功のカギは「ジャンプの高さは調子によって変わらない。いかにリラックスして縄を速く回すか。そこを追求してきた。力んだら終わりです」と分析する。

縄跳び教室や、全国の小学校での出張授業などで生計を立てている。「8重跳びを成功させて縄跳び界を盛り上げて、将来はオリンピック種目に」。紅白出場を決めたNiziU(ニジュー)の縄跳びダンスでも注目は高まってきたが、8重(ハチジュー)跳びギネス達成でさらに加速させる。【鎌田直秀】

◆森口明利(もりぐち・あきとし)1989年(平元)10月19日生まれ、福井市出身。藤島高、京大工学部を経て京大大学院エネルギー科学研究科修士課程。卒業後は車のシートなどに関連する企業に就職。19年1月にプロ転向。ギネス記録達成は17年に「7重跳び1回」、19年に「6重跳び連続4回」「5重跳び連続26回」。170センチ、61キロ。独身。血液型A。趣味は動植物鑑賞、滝巡り。愛称はもりぞー。