東京・池袋の都道で19年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第3回公判が14日、東京地裁で開かれた。この日は同被告の弁護側の意見陳述が行われ、弁護人は同被告が事故発生時に運転していたトヨタ「プリウス」の電気系統などの経年劣化が事故の原因で、同被告はアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えていないなどと主張した。

飯塚被告は午前10時1分、104号法廷に車いすに乗って入廷し、入定時に軽く一礼した。弁護人は飯塚被告が事故が発生した19年4月19日正午に、昼食に向かうために車で家を出て、自宅から5キロ離れた文京区へ移動し、事故発生までの約20分、急いで運転したことはなく、ややゆっくりめに運転したと主張。さらに

<1>走行中、車線変更した際にアクセルペダルを踏んでいないにもかかわらず加速し、ブレーキペダルを何度踏んでも減速しなかった

<2>事故現場の交差点に差しかかる前に、右足をアクセルペダルからブレーキペダルに移していた

<3>パニック状態に陥りながらも、アクセルペダルを目視してからブレーキペダルを踏んだが、抜けたような感覚があり減速せず、大事故に繋がった

などと主張。飯塚被告が運転したプリウスが発売されたのは03年、同被告が購入したのは08年で、電解コンデンサーなどに経年劣化があったと主張した。

飯塚被告は10月8日の初公判の際に「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しております。車に何らかの異常が生じたから暴走したと考えます」と無罪を主張している一方、検察側は飯塚被告が走行中に車線変更を繰り返す中でアクセルを誤って踏み、時速60キロから84キロまで加速させたこと、その後も踏み続けた結果、事故発生当時は96キロまで加速していたと説明。車の故障診断センサーにアクセル、ブレーキともに故障の記録がない上「アクセルを踏み続けた一方、ブレーキを踏んでいないデータが記録されている」とも指摘している。

3日に開かれた第2回公判では、事故を目撃した3人の目撃者が証言台に立った。3人の目撃者はいずれも「ブレーキランプの点灯を見ていない」と証言した。うち1人は「あおり運転かと思ったほど、危険な走行をしていた。(飯塚被告の車が)ゴミ収集車にぶつかるまで、1回もブレーキランプは点灯しなかった」と証言している。