2019年参院選広島選挙区をめぐる公職選挙法違反事件で、懲役1年4月(執行猶予5年)の有罪判決を受けた参院議員河井案里被告(47=自民党を離党)が3日、辞職した。

4日の控訴期限直前で、国会での説明は一切しないまま表舞台を去る。昨年6月の逮捕後に受け取った歳費など1300万円あまりの原資は、国民の税金だ。案里議員を参院選で公認した自民党の責任は重い。菅政権にとっても、不祥事の連鎖が止まらない。

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案里議員は3日午後、秘書を通じて山東昭子参院議長に辞職願を提出。夜の本会議で辞職が認められた。

案里議員は辞職前、書面でコメントを発表。公選法違反事件での有罪判決には納得しかねるとしながらも「たとえ1審でも信頼を回復できなかったことについては政治的責任を引き受けるべき」と主張。「これ以上争いを長引かせ混乱を生じせしめることも私の本意ではない」として、控訴しない方針を明かした。支援者らには「失望させてしまったことにお顔向けできない」と記し、謝罪した。

4日が控訴期限だった。検察側も控訴しない方針とみられ、有罪判決が確定する見通しだ。

案里議員は自民党を離党したが、同党の二階俊博幹事長もコメントを発表。「誠に残念。私たちも改めて自らを律し、国民の信頼回復に努める」としたが、国民の不信感拡大は避けられない。案里議員は昨年6月に逮捕されたが、10月の保釈後も国会に登院していない。一方で、給料にあたる歳費とボーナスに当たる期末手当は得ている。

逮捕から辞職した3日までに支払われた歳費と期末手当は計約1353万円。毎月の歳費は103万5200円、昨年6月と12月の期末手当は計約630万円にのぼる。ほかにも月額100万円支給される「文書通信交通滞在費」があり、総額約2053万円が支給された計算だ。案里議員は初当選からほどなく今回の問題が浮上し、逮捕までにも国会をたびたび欠席。職責を果たさないまま去ったといわれても仕方ない。

参院選当時官房長官で、案里議員の応援に入った菅首相にもさらなる打撃だ。新型コロナ対応の遅れが批判される最中に東京・銀座のクラブでの飲食が発覚。虚偽説明した自民党3議員が離党、公明党議員は議員辞職した直後、「政治とカネ」の再燃。緊急事態宣言の延長、与党議員の不祥事で謝罪が続く首相はこの日も「国民の批判が広がっていることは重く受け止める」と、述べた。【大上悟】