菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社から接待を受けた山田真貴子内閣広報官が25日、初めて参考人招致された衆院予算委員会で野党の追及を受けた。総務省審議官だった2019年11月に菅首相の長男らからの高額接待で、放送事業の許認可権を持つ総務省と、一事業者との親密な関係に疑惑を指摘された。迷走答弁を繰り返す場面もあったが、自ら辞任の意思がないことを明らかにした。

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菅政権発足と同時に脚光を浴びてきた女性初の内閣広報官が、舞台を初の国会に移し、参考人としてフラッシュを浴びた。総務審議官だった19年11月6日に菅首相の長男ら東北新社側の4人から単価7万4203円の高額接待がやり玉に挙がった。立憲民主党の黒岩宇洋氏から「一般家庭の1カ月の食費に当たる」と、あきれ顔で指摘された。総務省統計局が発表した19年の単身世帯1カ月の平均食費は4万4263円。2人以上の世帯(2・97人)の同平均が8万461円。1回の食事代として、比較にならないほど破格だ。

初答弁も迷走に迷走を続けた。当時、官房長官だった菅首相の長男を「認識していた」としながら、5人の会食時の認識は「どういう方がいたかも、にわかに思い出せなかった」と曖昧。24日に明らかにされた「和牛ステーキ、海鮮料理」の範囲内では会食メニューは明瞭だが、「名刺交換もしていない。横並び(の席)だったで、お話ししていない」と言葉に詰まる場面も。首相会見の司会を務める毅然(きぜん)さはなく、答弁も「視界不良」だ。「横並び、ということは鉄板焼きみたいな店か」と問われると「これ以上のことはお店の特定につながる。お店の営業にかかわる」と店の説明をすべて拒否した。

野党は山田氏の辞任を求めた。山田氏は「職務を続けていく中で、改めてよく反省し、できる限り自らを改善していきたい」と続投を強調も、菅首相とは「直接、話していない」と、先行きは不透明だ。内閣広報官は特別職の国家公務員で月給117万5000円。山田氏は10分の6を自主返納する意向で、加藤勝信官房長官は「70万5000円を自主返納されるものと認識している」とした。

菅首相肝いりで大抜てきした内閣広報官の不祥事は疑惑を払拭(ふっしょく)できず。総務省幹部の処分で幕引きを図ったが事態は好転せず、野党は菅首相の長男の参考人招致を強く求める。疑惑の渦中にいる長男の国会招致をのむのか、どうか。政権のダメージは深く、傷口はさらに広がっている。【大上悟】