東日本大震災を経験した東北の高校球児2人が10日、東大の文科2類に合格した。

仙台一(宮城)の大友剛さん(18)は現役で、花巻東(岩手)の大巻将人さん(20)は3度目の挑戦で難関突破。東京6大学野球リーグ56連敗中で98年春から続く最下位脱出に挑む野球部入部も希望している。

大友さんは昨夏の宮城県独自大会で背番号12の投手として、34年ぶりの4強進出に貢献。休校などもあったコロナ禍も乗り越え「自主トレもしながら、勉強も多く出来るチャンスと前向きに捉えた。やれば出来るという経験は受験にも生かせた」と自信につなげた。

宮城県名取市出身で自宅は半壊。沿岸部に住んでいた親戚を津波で亡くした経験もある。同校グラウンドも車やがれきが流れつき、撤去や整備で約1年間は使用出来なかった過去も知っている。「名取の閖上地区の朝市が復活したり、地域の方々の復興へのパワーを感じて、自分も頑張らないとと思ってきた。将来の夢の選択肢も広がった。野球では神宮のマウンドに立つ姿を見せたい」と誓った。

大巻さんはエンゼルス大谷翔平らを輩出した野球の名門から史上初の快挙だ。18年に春夏連続の甲子園出場に記録員として貢献。現役時代は午後11時の点呼後に約2時間の勉強。卒業後は都内の予備校に通いながら、筋トレや素振りなどとも両立してきた。

震災時は自宅被害は大きくなかったが、岩手県沿岸部に実家がある仲間からは、想像を絶する当時の苦しみを伝え聞いてきた。「何かを乗り越えた人たちにチャンスは生まれると思えたし、震災のことも含めて、自分も首都圏と地方をつないだり、地域活性化に関わっていきたい。メジャーリーガーの先輩たちとは違う角度で影響や刺激を与えられるような人間にもなりたい」。野球に関しても「東大は勝利の価値がもっとも高い野球部なので、その力になりたい」と意気込んだ。【鎌田直秀】