総務省幹部らによる違法接待問題は16日の衆院予算委員会でも与野党から追及が続いた。

菅義偉首相の長男正剛氏が勤務する放送事業会社「東北新社」の外資規制違反をめぐり、総務省双方の主張の食い違いは続いた。東北新社側から違法状態の報告をした相手と指摘され、新たに参考人招致された総務省の鈴木信也電波部長は「記憶がございません」を連発。東北新社側の主張を重ねて否認した。

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総務省幹部らによる違法接待問題で、国会は大揺れが止まらない。1976年2月、ロッキード事件の証人喚問で小佐野賢治氏(当時国際興業社主)が繰り返して流行語にもなった「記憶にございません」がプレーバックする事態となった。

立憲民主党の後藤祐一氏らは、17年8月に東北新社が外資規制違反を解消するため、子会社への事業承継を提案する目的で鈴木氏と面会したとの東北新社側の証言について、繰り返し確認を求めた。だが、鈴木氏は「そのような報告を受けた事実に関する記憶はございません」と一貫して反論し、野党席から「政治家みたいなこと言うな」とヤジが飛んだ。

菅首相の長男ら東北新社側との会食事実の否定を含めて、鈴木氏は計11回の「記憶にございません」を連発した。立民の逢坂誠二氏は「記憶にございません、というのはロッキード事件以来、国会での常とう文句。記憶を早く取り戻していただくことを強く申し上げる」と、皮肉った。

両者の主張は前日15日から平行線のまま。武田良太総務相は、17日から始まる元検事の弁護士ら第三者による検証委員会で「慎重に審査されるべきだ」とした。野党側は、偽証罪に問える可能性がある証人喚問を要求した。

総務省はこの日、違法接待で停職3カ月の懲戒処分を受けた谷脇康彦前総務審議官の辞職願を受理した。谷脇氏の同意を得たため退職金約5800万円の支払いは留保する。一方、3月31日の定年前の退職に、後藤氏は「口封じだ。谷脇さんは今日から民間人。民間人は国会がいくら呼ぼうが、拒否権がある。隠蔽(いんぺい)じゃないですか」などと重ねて批判した。違法接待発覚に端を発した問題は深刻さを増し、誕生半年の節目を迎えた菅政権のダメージはさらに深まっている。【大上悟】