64年東京五輪男子マラソンでともにメダルに挑んだ友情の絆を、聖火に込めた。同日本代表で68年メキシコ五輪では銀メダルを獲得した君原健二さん(80)は、東京五輪銅メダルの故円谷幸吉さんが生まれ育った須賀川市で区間最終ランナーを務めた。午前中には円谷さんの墓前に「一緒に走りましょう」と手を合わせ、本番は写真を首からかけてユニホームの下に忍ばせた。「私を成長させていただいた、かけがえのない存在。ともに聖火をつなぎたかった。オリンピックに出た時よりも感動しました」。64年東京五輪で使用したものを復元した特注シューズで軽やかに駆け抜けた。

須賀川市で「第2の円谷」育成を目的とした陸上クラブ「円谷ランナーズ」の小中学生が伴走してくれたことも喜びだった。同クラブ出身で、東京五輪男子1万メートル代表に内定している相沢晃(23=旭化成)の名前も挙げ「円谷さんの出身地から、円谷さんのような良い選手が生まれることがうれしい。これからも期待しています」。

伴走した全国ランキング1位の松下ゆめのさん(石川小4年)らに求められ、「人間に与えられた最大の力は努力すること」と記した色紙を贈った。松下さんも「夢はオリンピックで優勝することです」。円谷さんの思いを受け継いだジュニア選手の頑張りが君原さんの喜びでもあった。【鎌田直秀】