渡辺明名人(棋王・王将=37)が初防衛を果たした。28日午前9時からの2日制で行われていた、将棋の第79期名人戦7番勝負第5局(神奈川県箱根町「ホテル花月園」)は29日午後6時37分、94手までで後手の渡辺が挑戦者の斎藤慎太郎八段(28)を下した。これで対戦成績を4勝1敗として名人を防衛し、棋王、王将の3冠を堅持した。
来月6日には、第92期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第1局(千葉県木更津市「竜宮城スパホテル三日月」)で藤井聡太2冠(18)に挑戦する。前期とは立場が入れ替わってのリベンジ戦が始まる。
終局後の渡辺名人の一問一答は以下の通り
―本局を振り返って
渡辺 早々に攻め込まれる展開で、まずいんだろうと思いながら進めていました。
―封じ手(55手目先手8九金)の局面では
渡辺 1日目からいいなりになって苦しくしてしまい、選択権のない将棋だった。どうやって頑張ろうかと考えていました。
―形勢が好転したのは
渡辺 後手5五銀(64手目)とぶつけて大変になったかなと思いました。その後、後手5四馬(70手目)の成否がハッキリ分かっておらず、形勢は分からないと思いながらやっていました。
―勝ちになったのは?
渡辺 (7六にある)飛車を取って(84手目後手7六同馬)と取って、後手5四馬(86手目)と戻り、後手4三玉(92手目)とかわし、詰み手順を見つけて勝ちではないかと思いました。今日の午後になって急に好転したので、防衛を意識することはなかった。緊張も昨年ほどではなかった。防衛戦自体は、ほかのタイトル戦でやってきてますので。
―夕食休憩(28日の午後6時から6時30分まで)を入れたのは?
渡辺 念を入れて確認しようと。
―シリーズの勝因は
渡辺 やり方はずっと変えていません。作戦的にうまくいきました。
―内容的には
渡辺 全体に難しい将棋が多かった。考えさせられることが多かったです。
―初戦黒星の後、4連勝で初防衛。今シリーズを振り返ってください
渡辺 1局目の激戦で開幕し、4局目とか大変な将棋が多かった。昨年は(コロナ禍での対局延期等があり)イレギュラーな日程で結構バタバタとここまで来た。通常日程で守れた。あと1年くらい名人でいられる。短い在位期間で終わらず良かった。結果を出せてうれしく思います。
―ところで、シリーズ中に使っていたのはスワローズ(渡辺はヤクルトファン)のマスクケース?
渡辺 対局に持参する棋士が多く、今年に入って使い始めました。対局中はピリピリするので、キャラ物があった方がなごむかなと。
―来月には棋聖戦で藤井聡太棋聖に挑戦します
渡辺 1月から防衛戦が3つ続いたので、終わって休みたいと思っていた。挑戦権を獲得できたのはうれしい誤算。休むなんて言ってないで、4冠目指して、もう1カ月頑張りたい。