東京五輪の聖火リレーは9日、秋田県2日目が行われ、プロ野球通算284勝の「世界最高サブマリン投手」山田久志氏(72)が故郷の能代市区間第1走者として“先発”し、完璧なリレーでつないだ。沿道の応援も受けて約200メートルを走り終えると、「走り足りない。もう500メートルは行けたよね。冗談だけど、それくらいの気持ち。トーチの意外とズシッとくる重み、価値の重さも感じた」。17年の能代市市民栄誉賞授賞式以来4年ぶりの凱旋(がいせん)に、喜びを隠さなかった。

阪急時代には史上最多の12年連続開幕投手を務めた大投手だ。3年連続パ・リーグMVPに加え、76年には26勝を挙げて最多勝も3度。アンダースロー投手として歴史を築いた功績をたたえ、能代球場は07年に「山田久志サブマリンスタジアム」と改名された。球場内にはユニホーム、トロフィー、写真などが掲示され「山田久志記念館」のように親しまれ、高校球児らの目標の存在となっている。

東京五輪には「アスリートとしては世界の技を競ってほしいが、個人的には開催していいのか解決できない」と複雑な心境も明かした。今大会は08年北京以来、野球が復活。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では09年に投手コーチとして金メダル経験があるだけに「リーダーが必要。自分の時は(現西武の松坂)大輔だった。今回はマー君(楽天田中将大)になるのか」と精神的支柱となる存在を重要視した。コロナ禍による選手招集の有利さも加わる自国開催だけに「負けるわけにはいかないプレッシャーはあるけれど、普通にやっていたら勝てる」と、最後は金言を残した。【鎌田直秀】

◆9日の聖火リレー 秋田2日目は「なまはげ」で有名な男鹿市など7市町村を巡った。出身地の潟上市のスタートを任された総合格闘家の桜庭和志は「子どもの時に来た海水浴場。砂利道だったので転ばないように気をつけた」と得意の寝技は封印。大相撲の押尾川親方(元関脇豪風)は応援大使を務める大潟村で走り「お米がおいしいのは魅力。五輪も安心、安全、盛大に開催出来るよう願っている」と思いもつないだ。今日10日は青森へ入るが、公道でのリレーは中止。青森市の青い海公園で点火セレモニーのみ行う。