東京・築地の波除神社で13日、夏の例大祭「つきじ獅子祭」の疫病よけ巡行が2年ぶりに実施された。

同神社は、東京オリンピック(五輪)の選手たちが競技前に待機するバスターミナル(築地市場跡地)に隣接。目と鼻の先にある場所で、宮司らが厄よけの儀式を行い、神様の御霊(みたま)の入った唐櫃(からびつ)が築地の町すみずみを渡り歩いた。日本古来の神事が、おもてなしに一役買っている。

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厳かに、ソーシャルディスタンスをとりながら波除神社例大祭が執り行われた。本来の姿は、大きな2体の獅子頭と神輿(みこし)が町の衆に担がれ、築地町内をにぎやかに練り歩くお祭り。年に1度、粋な江戸っ子の心が躍動する瞬間でもあった。

しかし、2年にわたるコロナ禍で昨年は中止に。そして今年は、人を集める祭りではなく神事として、本殿に奉納している直方体の箱状の唐櫃(からびつ)に神様の御霊(みたま)を納めて、祭りを執行する役員だけで執り行った。波除神社では「この祭りは約360年続いていますが、江戸時代は唐櫃のようなものを使っておごそかに神事だけをおこなっていた。コロナの影響はありますが本来の姿に戻ったともいえる」と解説する。

波除神社は旧築地市場に隣接していて、市場の守り神としても知られていた。現在、旧市場跡では新型コロナウイルスのワクチン接種会場にもなっており、来月からの東京五輪では、各国の出場選手らが時間調整をするバスターミナルになっている。競技を控える選手たちの、いわば出発地点とも言える場所だ。開幕を目前に控え、そこに隣接する神社で、今年は、より神事に近い形で祭りが執り行われたことは、さらなる厄よけ、開催安全への期待が持てる。祭礼委員長の鈴木章夫さん(72=鳥藤会長)は「これでコロナがおさまって五輪もいい方向にいくといいね。築地にも活気が戻ってくるきっかけになればいい」と話した。

【寺沢卓】