東京五輪の聖火「復興の火」は16日、岩手県に入った。聖火リレーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期して福島県からスタート。11年3月東日本大震災の東北被災3県(岩手、宮城、福島)に再び帰ってきた。

雫石町から始まり、沿道の観客から声援が送られた。普代村では沿岸部を走る「復興のシンボル」三陸鉄道(岩手県宮古市)に載せて聖火を運んだ。普代駅から十府ケ浦海岸駅まで、聖火をランタンに移し安全に乗車。三陸鉄道で聖火を運ぶのは昨年3月以来2回目。運行責任者を担う橋上和司旅客営業部部長(66)は「全国を回ってきた聖火をつなぐのは身が引き締まる思いです。世界中の方に三陸鉄道が元気に走っているところ見て頂きたい」と話した。

リアス線の盛(さかり)駅~久慈駅の全長163キロ。三陸鉄道は震災に続き、19年の台風19号でも甚大な被害を受けた。土砂が流れ込み線路の崩壊が相次いだ。国内外からの支援で段階的に復旧活動が続いた。20年3月に運転を再開し、約5カ月ぶりに全線が復旧したが、今度は新型コロナが影響を及ぼした。国内での感染者が増加傾向にあった時期に、岩手県は都道府県で最も長く感染者ゼロを維持していた。それでも人流は大きく減少。橋上さんは「我々からすると、約2年大変な状況が続いている状況です」と打ち明けた。

幾度の困難を乗り越え、地域とともに走る三陸鉄道。橋上さんは「コロナが落ち着いたら、東北に足を運んでほしい。三陸鉄道に乗車していただけたらうれしいです」と前を向く。聖火とともに三陸鉄道に乗車した普代村の金子恵美さん(15)は「普代村の代表として聖火にみんなの思いをのせたい」とコメント。全国を巡ってきた、復興の火が被災地を明るく照らす。【澤田直人】

◆16日の聖火リレー 岩手県に入り、雫石町からスタートした。八幡平市ではノルディックスキー・ジャンプ男子の小林陵侑、岩手町では俳優の辰巳琢郎、洋野町では、パラ陸上の円盤投げで04年アテネ五輪から3大会連続出場し、砲丸投げで16年リオ五輪に出場した大井利江らが聖火をつないだ。17日は岩手県で2日目を迎える。東日本大震災からの復興の象徴・奇跡の一本松がある陸前高田市などを巡る。山田町ではお笑いタレント山田邦子、釜石市では日本ラグビー協会の森重隆会長が登場する。