菅義偉首相の自民党総裁選不出馬表明で、選挙戦の構図はがらりと変わる。首相と、すでに出馬表明した岸田文雄前総務会長(64)が軸の「一騎打ち型」から、候補者乱立によるガチンコ総裁選となる見通しだ。

菅政権の閣僚で、今回は出馬見送りとみられた河野太郎行革相(58)は3日、周囲に出馬の意向を伝えた。所属の麻生派(53人)内では世代交代が一気に進みかねず、会長の麻生太郎財務相が河野氏の出馬に慎重。この日、麻生氏と会談した河野氏は「これから仲間の皆さんと相談したい」と述べるにとどめた。麻生派として河野氏を推すかどうかはまだ、見通せない。

「白紙」を貫く石破茂元幹事長(64)は国民的人気が高く、出馬待望論が強い。今回出て負ければ5連敗で「完全に終わる」(関係者)が、石破氏は「まったく新しい展開。しかるべき時に結論を出したい」と、出馬に含みを持たせた。

首相に事実上の出馬断念を迫られた下村博文政調会長(67)も再度、出馬を検討。無派閥の野田聖子幹事長代行(60)は出馬に意欲をみせ、高市早苗前総務相(60)は出馬準備を進める。岸田氏は「国民、党員にしっかり向き合い選挙を行うのが大事」と訴えた。

党内では、影響力を持つ麻生氏、安倍晋三前首相、甘利明税調会長の「3A」が、二階執行部と主導権争いを続けてきた。岸田氏が出馬会見で党役員の任期制をぶち上げたのも、二階氏の権力とカネの集中に反発する「3A」への「秋波」といわれる。

安倍、麻生両氏は前回、「反・石破」で首相を支援。今回は態度を保留していたが、首相の退場を受け「3A」や主要派閥の「勝ち馬」作戦も始まった。3Aや派閥の「論理」は、果たして通用するのだろうか。