15日午前8時半ごろ、大学入学共通テストの会場の東大キャンパス近くで受験生2人と70代男性が刃物のようなもので襲われた。警視庁によると、現場近くで少年を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。愛知県名古屋市の17歳の高校生だという。

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碓井真史新潟青陵大教授(社会心理学)

人生に絶望し、死んでしまおうと考える人の多くは「何て自分はダメなんだろう。死ぬしかない」と発想しますが、通り魔事件を起こす人は「自分は本来ならばもっとすごい人間なのに、どうしてこうなったのか。こんなはずじゃなかったのに」と思いをスリップさせます。悪いのは社会で、最後に自分は本当はすごい人間だと示したい。世間に対する復讐(ふくしゅう)で、人生最後の一発大逆転という感覚です。

高2の少年は勉強ができ、小・中では成績もトップレベルの子だったと思います。それが普通になる。思春期挫折症候群と言いますが、広い世界に入ると、自分の力が思い知らされる。普通は自分なりの人生を歩き始めますが、彼は落ち込むだけでなく、世の中が悪いと思った。東大は自分を評価してくれなかった勉強の象徴だったのだと思います。

通り魔事件は大きく報道され、注目を集めます。見返すことで人生を終わりにしたい人にとっては、逮捕も死刑も怖くないので犯罪のブレーキになりません。通り魔事件は起こり始めると、連鎖します。ただ、彼らはプロの犯罪者ではないので、ささいなところで実行し、踏みとどまる。家族や友人、教師の温かい声掛けが重要です。