4年連続6回目の獲得を目指した「冬将軍」渡辺明王将(37)が、2日制7番勝負で初めて4連敗を喫した。「封じ手ではまずまずかと思っていたんですけど、その後、手が広くなったところで間違えてしまった感じ」と振り返った。

開幕局の静岡県掛川市では過去6戦6勝、第2局までで連敗の例なしといった王将戦での有利なデータは、「避けては通れない相手」と評していた藤井に、ことごとく打ち砕かれた。

昨年半ばには1秒間に8000万手を読むコンピューターも購入し、人工知能(AI)を用いたソフトも導入した。それでも引き立て役になってしまった。

第4局は、得意戦法の矢倉に望みを託した。20年7月に1勝2敗で迎えた棋聖戦第4局、21年7月に連敗して迎えた同第3局、どちらも藤井にかど番で臨んだ先手番で、矢倉を採用して敗れた。今度こそと手を尽くしたが、三たび敗れた。「また(昨年の棋聖戦に続いて)ストレートで負けてしまったことについては、もうちょっと何とかしたかったという感じですかね。この結果は残念」と言葉少なだった。

現在、永瀬拓矢王座(29)の挑戦を受ける棋王戦5番勝負も並行して行っている。来週19日には第2局(金沢市)がある。4月からは、斎藤慎太郎八段(28)の挑戦を2年連続で受ける名人戦7番勝負もある。気持ちを切り替えて、2冠の防衛に挑むしかない。【赤塚辰浩】

【王将戦7番勝負対局VTR】

◆第1局(1月9、10日、静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」) 相掛かりとなった開幕局は、最終盤まで優劣不明のまま双方1分将棋の熱戦に。先手の藤井が最後に寄せ切り、139手で先勝。掛川対局6戦6勝の渡辺に土をつけた。

◆第2局(1月22、23日、大阪府高槻市「山水館」) 後手藤井が角換わりから、2日目に入って一気に攻めかかる。ほぼ一直線の「電車道」で午後4時15分、98手で圧勝。

◆第3局(1月29、30日、栃木県大田原市「ホテル花月」) 1局目同様、相掛かりの出だし。わずかにリードしていた後手渡辺が攻めあぐねたのに対し、20手以上の詰み筋を読み切った藤井が終盤の難解な攻防から抜け出し、135手で3連勝。

◆第4局(2月11、12日、東京都立川市「SORANO HOTEL」) 先手でかど番の渡辺が矢倉に望みを託すが、藤井はバランス重視で対応。攻めを封じながら徐々に押し返して盤を制圧する形で4連勝。初の王将を獲得し、史上最年少5冠に。