粘り強い抵抗で侵攻するロシア軍に苦戦を強いているウクライナのゼレンスキー大統領が、この1週間で少なくとも3度の暗殺危機を乗り越えたと英タイムズ紙が報じた。

「暗殺リスト」2番目のゼレンスキー大統領夫人、戦う女性国民たたえる「素晴らしい同胞たち」>>

同紙によると、ロシアの民間軍事会社ワグナー・グループの雇い兵とロシアと緊密な同盟関係にあるチェチェン共和国の特殊部隊が、同大統領を暗殺するためウクライナに送り込まれており、2月24日の侵攻開始以来、両グループによって3度暗殺を試みたがいずれも失敗に終わったと伝えている。

報道によると、ワグナー・グループはロシア政府の関連組織ではないものの、「プーチン大統領の料理人」の異名を持つロシア人実業家エフゲニー・プリゴジン氏が保有している組織で、メンバー400人以上がすでにゼレンスキー大統領がとどまっているキエフに潜伏しているという。大統領を含め24人の暗殺リストが作成されており、大統領夫人や家族、キエフ市長のボクシング元WBC・WBO世界ヘビー級王者のビタリ・クリチコ氏らがそのトップに名を連ねていると言われている。

同紙によると暗殺計画の情報が事前にウクライナ側に漏れていたといい、2月26日に行われたチェチェンの特殊部隊による暗殺計画は工作員がキエフに到達する前に阻止することに成功したという。暗殺阻止の過程で、両グループに死者が出たと伝えている。ワグナー・グループに近い情報筋は、ゼレンスキー大統領の護衛が詳細な情報を握っていたことに「不気味だ」とタイム紙に語っている。

ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、「この血なまぐさい戦争に加担したくない」というロシア連邦保安局(FSB)内部からリークがあったことを認めており、ウクライナ侵攻に不満を持つFSB諜報(ちょうほう)員の情報を基に暗殺を阻止したと述べているが、暗殺計画を示す具体的な証拠は提示していない。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)