ウクライナ外務省は、南東部マリウポリで16日、市民の大規模避難所として使われていた劇場がロシア軍の空爆を受けて崩壊し「大勢の人々ががれきの下に埋まっている」と発表した。国際人権団体は最近まで500人以上が避難していたと伝えた。生存者らが救出されたとの情報もあり、被害の全容は不明だ。

劇場には家を失った人々が身を寄せていたという。クレバ外相は劇場が「完全な廃虚になった」とし「ロシアは市民の避難先と知らなかったはずがない」と非難した。空爆前の14日の衛星写真では、建物前後の地面に「子供たち」とロシア語で大きく書かれていた。

民間施設への無差別攻撃は激化。マリウポリでは16日、妊婦や子どもの避難先となっていたスポーツ複合施設も空爆を受けたとウクライナ側が発表。市民の死者が2500人を超えたとされる。また首都キエフ北方では16日だけで市民53人が死亡。うち13人はパンを買うため店に並んでいた市民という。ロシア軍が制圧した南部メリトポリでは、軍に連行されたフョードロフ市長が解放された。ウクライナ側はロシア軍の捕虜9人を引き渡したという。

バイデン米大統領は16日、ロシアのプーチン大統領は「戦争犯罪人」と初めて明言し、対空ミサイルや無人機などウクライナへの8億ドル(約949億円)規模の追加軍事支援を発表した。ゼレンスキー氏は同日、米議会でオンライン演説し、「真珠湾攻撃や9・11を思い出してほしい」などと言及し、空爆を阻むため飛行禁止区域の設定を改めて要求。それが無理な場合は、防空システムや戦闘機の供与などの追加支援、一層の制裁などを強く求めた。