「1日でも侵攻を早く止めてもらいたい」。秋田県が12年にロシアのプーチン大統領に贈った秋田犬「ゆめ」を育てた、ブリーダーの秋田県大館市の畠山正二さん(79)が12日、取材に応じ、ロシアによるウクライナ侵攻を嘆いた。

ゆめは畠山さんが飼っている優姫(ゆうひめ=14)が12年4月に産んだ赤毛の雌。生後3カ月の時に、秋田県からの依頼で関係者を通じてプーチン氏のもとに贈られた。畠山さんは「(ゆめは)友好の証だったのに…」と肩を落とした。軍事侵攻を続けるプーチン氏に対しては「情けない」と残念そうに語った。

ロシアによる侵攻が始まってから1カ月半以上が経過したウクライナでも1頭の秋田犬が注目されている。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の街で、民間人132人の遺体が発見されたというマカリウで飼われている「リニ」という秋田犬だ。主人の帰りを待っているとされる秋田犬の姿は、SNSなどで拡散され、反響を呼んだ。

ウクライナの国会議員オレクシー・ゴンチャレンコ氏が11日、ツイッターで「忠実な犬(秋田犬)のリニは、玄関先で主人を1カ月近く待っています。飼い主の女性は悲劇的に亡くなりました。ボランティアは犬を避難所に連れて行こうとしましたが、拒否しました。リニにはマカリウのハチ公というニックネームがつきました」とつづった。日本の秋田犬の保護などを行っている関係者は、遠くウクライナの地で苦境にある秋田犬の話題に「心苦しいです」と思いを口にした。

ウクライナの内務省アントン・ゲラシチェンコ顧問もリニについて、SNSで発信しており、その後のリニの状況について、亡くなった飼い主の女性の親戚のもとへ引き取られることになったとしている。

◆秋田犬(あきたいぬ) 国指定天然記念物の日本犬6犬種(柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬)のうちの1種。マタギの伴侶として古くから秋田県大館地方で飼育されてきた。特徴は、立耳、巻尾で、体が大きく、雄は体高66・7センチ、体重30キロ以上、雌は体高60・6センチ、体重25~30キロ。飼い主に非常に忠実で、渋谷の「忠犬ハチ公」も秋田犬。1937年(昭12)に初来日したヘレン・ケラーが「秋田犬を連れて帰りたい」と熱望。贈られた「神風号」が初めて海を渡った。09年公開の忠犬ハチ公をモチーフにした米映画「HACHI 約束の犬」もヒットし、世界的に人気が広がった。