山口県阿武町が誤振り込みした金の一部を使用したとして同町の無職田口翔容疑者(24)が逮捕された事件で、町が出金先となる口座の仮差し押さえに着手したのは、容疑者から返還手続きを拒否されて13日以上たってからだったことが21日、分かった。「遅すぎた」と批判する声も上がっている。

町によると、容疑者の指定口座には4月8日、臨時特別給付金10万円に加え、誤って4630万円が振り込まれた。町は当日、金を依頼人に戻す「組み戻し」の手続きを要請。容疑者は一度は同意したが、一転拒否。同日から18日(19日付)までに34回、計4633万1922円を出金。主な振込先は国内の決済代行会社の口座だった。この間、町は14日に母親とともに容疑者と面会し、21日に会えた時は「金は既に動かした。もう戻せない」と言われた。町が決済代行会社の口座について仮差し押さえの申し立てに着手したのは同日以降で、裁判所に申し立てたのは4月下旬だった。

銀行関係者は「組み戻しの同意が得られなかった時点で出金先ではなく誤振込先の口座を仮差し押さえすべきだった。町の初動対応が甘かった」と指摘した。