藤井聡太叡王(竜王・王位・王将・棋聖=19)が5冠を堅持した。24日、千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で行われた第7期叡王戦5番勝負第3局で午後6時18分、109手で挑戦者の出口若武六段(27)を下した。これで3連勝とし、初防衛に成功した。同時に昨年8月の第62期王位戦7番勝負第5局で豊島将之九段(32)を下して以来、タイトル戦13連勝とした。これは羽生善治九段(51)が1995年(平7)11月の第8期竜王戦7番勝負第4局から、96年5月の第54期名人戦第3局まで続けた記録に肩を並べ、2位タイだ。

午前9時から始まった対局は、もつれにもつれて双方1分将棋になった。一時は負けも覚悟した。藤井は、「こちらが苦しくしてしまった。どうやって勝負しようかという局面が続いた」と述懐する。局面が進行すればするほど、1手の重みが増す。底力が試された。

「きわどくなってから勝つのが藤井さん」。立会人の石田和雄九段(75)の言葉どおり、最後の最後に抜け出した。105手目、先手3五桂と打ち込む。「詰んでいそうかな」。勝ち筋が見えた。次いで軽い手つきで先手3四金。最後は先手4三金打で、初めて迎える年上の後輩を仕留めた。

タイトル戦となった第3期から高見泰地、永瀬拓矢、豊島将之、藤井聡太と王者交代劇が続いた叡王戦で、初の防衛者として名を刻んだ。「結果を出したことはうれしく思います」と、喜びをかみしめた。

タイトル戦を経験するごとに、確実にパワーアップした。「防衛、挑戦に大きな違いはないです。大舞台で対局していくことがモチベーション」と言う。昨年の王位戦、叡王戦5番勝負で振り切った豊島には、続く竜王戦で4連勝した。一昨年の棋聖戦で3勝1敗だった渡辺明名人(38)には、昨年の棋聖戦3連勝、今年の王将戦4連勝。これが歴代2位タイのタイトル戦13連勝に結び付いた。

トップは、大山康晴15世名人が61年12月の九段戦から、62年10月の第1期十段戦第1局まで続いた17連勝。「そのことは気にせず、棋聖戦、王位戦に向けてしっかり準備したいです」。次は6月3日に兵庫県洲本市で開幕する、棋聖戦5番勝負に全力投球だ。【赤塚辰浩】

◆藤井聡太(ふじい・そうた) 2002年(平14)7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。5歳で祖母から将棋を教わり、地元の教室に通う。杉本昌隆八段門下。16年10月、14歳2カ月の史上最年少でプロ(四段)に。史上5人目の中学生棋士。17年6月、デビュー戦から29連勝で、将棋界の連勝新記録。18年2月、朝日杯で史上最年少の公式戦初制覇。20年7月、17歳11カ月の史上最年少で初タイトルとなる棋聖を獲得。翌月王位も奪取。21年7月、棋聖初防衛。タイトル通算3期獲得で九段昇段。王位防衛後、叡王と竜王を奪取。今年2月、王将も奪取して、19歳7カ月で最年少5冠に。21年の獲得賞金と対局料は6996万円で3位(20年は4554万円で4位)。

◆叡王(えいおう)戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。タイトル序列は竜王、名人、王位、王座、棋王に次いで6番目(以下王将、棋聖)。主催は不二家。特別協賛・ひふみ、SBI証券、協賛・中部電力、豊田自動織機、豊田通商。2015年(平27)に一般棋戦として第1期を開催。第3期以降、王座戦以来34年ぶりにタイトル戦に昇格した。歴代獲得者は高見泰地、永瀬拓矢、豊島将之、藤井聡太と毎回交代している。段位別予選を行って本戦進出者を決め、16人による勝ち抜き戦で挑戦者を決める。前期から主催に加わった不二家が「糖分補給」でアシストするため、午前10時と午後3時におやつを両対局者に提供する。