岸田文雄首相(64)は8日、安倍晋三元首相銃撃の一報を受け、参院選の遊説先だった山形県から自衛隊の輸送機やヘリコプターを乗りついで急きょ、帰京した。同日夕方、安倍元首相の死亡を受け、官邸で取材に応じ、「民主主義の根幹である選挙中に安倍元首相の命を奪った蛮行は断じて許せるものではない」と銃撃を強く非難。「民主主義の根幹たる自由で公正な選挙は絶対に守り抜かなければならない」と、参院選の完全な実施を目指す考えを示した。選挙戦最終日の9日は山梨、新潟の2県で演説を行う。

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安倍元首相の死去を受け、首相官邸で報道陣の取材に応えた岸田首相の目は赤く、うっすらと涙がにじんでいた。岸田氏は「私にとって当選同期であり、国会議員として、また安倍内閣を支える一閣僚として、多くの時間を共にした良き友人でもあった」と振り返った。憲政史上最長の任期を全うした安倍元首相について「1歩先を見通し、この国の未来を切り開くために大きな実績をさまざまな分野で残した偉大な政治家」とたたえ、凶弾に倒れたことを「残念でなりません」と悼んだ。

参院選最終盤を大きな事件が襲ったが、岸田首相は「民主主義の根幹たる自由で公正な選挙は絶対に守り抜かなければならない。決して暴力には屈しない」と表明。「最後の瞬間まで自分の声で国民に直接訴えて続けたい」と語った。

岸田首相は、この日午前、山形県酒田市内で街頭演説を行っていた。安倍氏への銃撃発生後、同県寒河江市で演説したが、その件については触れず、福島県と京都府を回る予定を取りやめ、帰京。救命措置が行われていた段階での取材で、安倍氏への警備が万全だったかと問われると「警備については最善をしていたと信じたいが、事態を確認することも大事だと思っています」と口にするにとどめた。

午後4時半には閣僚が官邸に集まり、今後の対応を協議する閣僚会議が行われた。その中で、岸田首相は二之湯智国家公安委員長に対し、選挙を公平に実施できるよう警備、警護を強化するよう要請し、同氏も警察庁長官に指示した。

安倍政権から菅政権を経て成立した岸田政権で、岸田首相は「貴重な力添えをいただいた」とし「(安倍元首相の)思いをしっかりと受け止めて引き継ぎ、責任を果たしていく。それが安倍元首相の思いに沿う行為だと思う」と語った。

選挙戦最終日の完全な実施を誓った岸田首相。最終日は、山梨県と新潟県で選挙戦最後の訴えを行う。

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