囲碁の中学生プロ、仲邑菫(すみれ)二段(13)が15日、滋賀県東近江市「クレフィール湖東」で打たれた第7回扇興杯女流最強戦・準決勝で藤沢里菜扇興杯(23)を破り、史上最年少(13歳4カ月)でのタイトル獲得まで、あと1勝とした。17日、同所で行われる決勝で牛(にゅう)栄子四段(23)と対戦する。

ついに分厚い壁を破った。女流最強の藤沢女流3冠には今年4月の初対局から3連敗中だったが、ついに白星を挙げた。

終局後、寄せ勝負になったことに仲邑は「藤沢先生に細かい勝負で勝てたのは自信になる」と喜んだ。対局は午前9時、藤沢の先番で開始。序盤から速い進行となったが、仲邑が中央での戦いを優位に展開し、その後も安定した打ち回しを見せ、粘る藤沢を振り切った。

現在の最年少タイトルは14年、藤沢が会津中央病院杯を制した15歳9カ月。仲邑がタイトルを争う決勝に進むのは、4月、藤沢が保持する女流名人に挑戦した3番勝負以来2度目となる。決勝で牛に勝てば、藤沢の持つ最年少タイトル獲得記録を大幅に更新する。

10歳0カ月の史上最年少でプロ入りして3年、着実に成長してきた。関係者は「こんなに早く強くなるとは…。13歳で2度目のタイトル戦に登場はまさに快挙です」と舌を巻く。

タイトル戦の緊張をほぐしてくれたのは勝負メシだった。「すごかったです」。この日の昼食には地元の近江牛の「ロース煮」、「うなぎの二重蒸し」「ハモ寿司」「山芋とろろそば」など勝負メシを堪能した。決勝のランチも楽しみだ。

デビュー当時、「中学生のうちにタイトルを取りたい」と立てた目標が現実味を帯びてきたが、初タイトルには「取ってから考えたい。意識したらよくないので、普段通り、打てたらないいなと」。いまハマっている漫画は「名探偵コナン」だ。中学生棋士が初タイトルへ「迷宮入り」はせず、真っすぐに進む。【松浦隆司】

○…もう一方の準決勝は、牛栄子四段が上野愛咲美女流立葵杯を破って決勝に進んだ。第3回扇興杯で準優勝した実力者の牛は「仲邑二段は強いが、せっかくここまで来たので、自分のベストを尽くしたい」。2度目の決勝進出で、初のタイトル獲得を目指す。

◆扇興杯女流最強戦 日本棋院と関西棋院の女流棋士が参加する、囲碁の女流棋戦の1つ。2015年(平27)、総合物流企業「センコー」の創業100周年記念事業として創設された。序列は女流本因坊戦、女流名人戦、女流立葵杯、女流棋聖戦に次ぐ。タイトル保持者が挑戦者を迎え撃つ「挑戦手合制」ではなく、前回優勝者も含めて毎年、勝ち抜き戦で行う。予選(前回優勝者と準優勝者、タイトル保持者は免除)を行った後、16人による本戦トーナメントでその年の優勝者が「扇興杯」を名乗る。優勝賞金800万円、準優勝400万円。